第27話 シルヴィの誕生日
今日はシルヴィの誕生日だ。この日のために色々準備してきた。具体的にはシルヴィが前から欲しいと言っていた。巨大なぬいぐるみだ。これをリーナズの町まで行き注文してきていた。
どれくらいの大きさになるかわからないが、今日、シルヴィの誕生日当日に完成したと知らせが来た。
「じゃあゼオンさん、僕はぬいぐるみを取ってきます! その間シルヴィに俺がお祝いのパーティーにいないと気付かせないでください!」
「ああ、わかっている。俺もシルヴィが寂しがる姿は見たくない、本当は、俺が行きたいが今日のパーティの主催者の俺がいないほど不自然なことはない。すまないが頼んだ。」
俺たちは廊下の陰でひそひそと話していた。そこに来る魔の足音に気が付かなかった。
「じゃあ行ってきます!」
そう言って駆け出そうとした瞬間シルヴィの寂しそうな声がした。
「エルビスどっか行っちゃうの?」
俺はずっこけて顔を擦り剥いた。いてぇ
俺とゼオンは全力でごまかす。
「あ、俺さお腹痛くて! トイレ行こうと思ってたんだぁそれだけさ!」
「おお! おおお! お腹が痛いのか! それは大変だ!速く行ってくるといい!シルヴィのパーティで漏らされては大変だ!」
おいおいゼオンさんよ。大根芝居過ぎないか?ひどいぞ。それ騙される馬鹿なんていないぞ。
だが意外にもシルヴィは騙された。
さて行くか! 頼んだぞ。ゼオン! 期待を込めた目でゼオンを見ると未だに大根芝居をしていた。だめだこりゃ
取り敢えずごまかしのためにトイレに行き、5分くらい暇なので魔法練習をしてトイレを出るとシルヴィがいた……
おぉぉぉぉぃ! ゼオン。てめぇ何してんだ! 俺は、シルヴィの隣のゼオンを睨む。ゼオンは、すまなそうに縮まった。
「エルビス! 速く行こ!」
そう言って俺は会場に引きずり込まれる。
まずいぞぉ!俺とゼオンの誕生日プレゼントはあれなんだ!このままでは誕生日プレゼントを渡さなかったのにパーティにだけ参加する、どうしようもないやつになる!
ゼオンは致命的だ!こんなパーティ開く前にプレゼント渡せやと言われかねないぞ!
「あ、あの! シルヴィあのな!」
そこまで言うと遮るようにシルヴィが話し出す。
「わかってるよ。誕生日プレゼント用意できなかったんでしょ? 最近二人で話合ってるの見てたから。」
「違うんだ! あるんだよ! でも今この場になくて取りに行こうとしてるんだ!」
もう諦めて自白した。するとシルヴィは笑顔で言う。
「そんなのいいから一緒にいてほしいな」
「任せろ!」
即堕ちです。どうしようと焦っていたこともあり許されて嬉しくなってしまいました。
パーティは7時に終わった。ここからが勝負だ!俺は全力で屋敷を飛び出し裏山を超加速で駆け上る。
何としても今日中にシルヴィにぬいぐるみを渡す!山頂まで来た。後は駆け下りて一直線だ!
夜の山を駆け下りる、途中で見かけた魔物も帰りの妨害にならないように倒していく。
「おいおい、こんな時にお出ましか! 黒魔種! 邪魔だ!」
スキル全開でオークの頭を貫く。終わり! 走れ!
街の門までついたがすでに閉門している。だが領主からの手紙がある!
「兵士さんこれを読んでください」
「なんだ! こんな時間にもう閉門してるぞよほどの理由がなきゃ開けないぞ」
そう言いながら手紙を読み終わる。
「おい! 門を開けろ!領主様の使いだ!」
「は? こんな子供が?」
「いいから開けろ! 何も聞くなと書いてある!あとすぐ街を出るらしい! その間、門は俺たちで守るんだ」
そう言ってあっさり通してくれた。裁縫屋までもう少し。
目の前まで来たがやはり閉まっている。
「すみません! 領主の使いの者です!」
そう言って戸を何度か叩くと明かりがついた。よかった。
「なに?こんな時間にって、依頼の子ね。こんな時間にご苦労様。今渡すわね」
そう言って裏から持ってきたのは俺の想像を超える大きさだった。一メートル弱ある。でかすぎ。
どうやって持ち帰ろう。そう言えば闇魔法に収納できる魔法があるって聞いたな、あんまり使った事なかったけどちょうどいい。
そう思い影の中に別空間をイメージさせる。某アニメの某ポケットがあるから想像しやすかった。
すっぽりと一メートルを超えるぬいぐるみは異次元に消える。
さて帰ろう!店主は驚きすぎで腰を抜かしていたが知らん!礼は言った。
超加速を使い町の門を走りすぎ元の裏山の頂上まで来る。途中何度か転んでボロボロだ。
あと少しそんなとき再び黒魔種が出る。スライムだ。恐ろしい速度で俺に飛びつき窒息させてきた。
体力自動回復 (極大)があるので窒息では死なないが鬱陶しい、苦しいしな!
破壊付与を纏わせた手でルライムを掴むと一気に崩壊した。
シルヴィの家に飛び込む、メイドたちに一瞬警戒されたが俺を見て安心したように事情を聞いてきたが無視してシルヴィの部屋まで走る。
ホールの時計がもうもうすぐ日が変わることを指していたためだ。シルヴィの部屋の戸を開けシルヴィのベッドの隣に巨大ぬいぐるみを置いた。
終わった!間に合った疲れ果てそのままシルヴィのベットに倒れこんだ。
翌日、屋敷とシルヴィのベットを泥だらけにしたことを怒られたのは言うまでもない。
それでもシルヴィの笑顔が見れてよかった。
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