第30話 エルビスの妹レイラ

 

 未来身の鏡を使った翌日、家に一通の手紙が届いた。封蝋には魔術学校の印が押されているが俺の魔術学校へのお誘いの手紙ではない。妹が送ってきたものだろう。


 この村の中で家が2番目に大きい理由は、妹にある。妹は、3属性魔法使いなのだ、それだけならシルヴィも同じだ、それでもかなり珍しいのだが、我が妹レイラは空間魔法に適性があった。伝説の空間魔法だ。


 更にレイラは魔術に関して言えば人類トップクラスの天才だ。自身の空間魔法を研究する為、魔術学校に通っている。


 レイラはその契約金のほとんどを仕送りとして家に送るためあまり余ったお金を使い家を拡張した。というより立て直した。


 そんな妹の手紙の封蝋を破れない様にゆっくりと開け中身を確認する。



『 兄さんへ

 しばらく暇ができたので一時的に帰ります。会ったらいっぱい甘えたいです。覚悟してください。あと、魔法適性のない兄さんに魔法を付与する技術を開発しました。試したいので睡眠はしっかりとってください。』


 妹が帰ってくるらしい、それと妹に魔法適性ができたことを伝えるのを忘れていたのを思い出した。俺は、前世の記憶を思い出すまで魔法適性がなかったのだ。


「マスター? その手紙は一体? 女の臭いがします。誰の手紙でしょうか?」


 唐突に俺の背後に湧き出たディーネが真剣な顔で俺に詰め寄りまじめなトーンで聞いてくる。


「な、なんでそんなに気にするんだ? 俺とディーネはそんなに関係ないだろ」


「何を言っているんですか? あなたの恋人や妻は私が仕えるべき対象にもなります! 故に重要です! マスターを幸せにできる人間でなければだめなのです!」


 ディーネがシルヴィに攻撃的な理由が何となく理解できた。それでも、もう少し優しくできないものかな?


 俺の中ではシルヴィとディーネを合わせるのは最大の禁忌と言ってもいいくらいだ。


「それでだれなのですか?」


「妹だよ、レイラって言うんだ、いいな! シルヴィみたいな扱いは絶対にするなよ! 繊細な子なんだ」


 ディーネの顔が驚いた顔のまま固まっている。


「おーい、大丈夫か?」


「は! すみません妹君がいたのですね。主人の事ならすべて把握しておくのが私の仕事なのに大事な妹様の存在に気が付かないなど一生の不覚! お仕置きを!」



 いかん、ディーネがヒートアップしてきた。いつまでも玄関で固まっているわけにはいかない


「父さん母さん!レイラから手紙来てた、一時的に帰って来るってさ」


 そう伝えると喜んだ顔をして妹の自慢話を始めた。長くなりそうだシルヴィの所に行くか……そして居候のカインさんはなかなか妹の自慢話から逃げられず、恨めしげな目で見ている。


「マスターどこに行かれるので?」


「シルヴィのとこ」


 ディーネが俺の前に立ちふさがる、


「だめです! いつもいつもシルヴィの所に行ってないでたまには私とあs……一緒にいましょう!」


「えぇ~なんでそんなにシルヴィを嫌うんだよ? ディーネが喧嘩しないなら連れていけるのに」


「何か嫌なんです!どことなく私たちに似ている気がして、そんな人がマスターとくっつくなんて許せませんよ!」


 似てるってなんだよ?シルヴィは人間だぞ?ひょっとしてあれか?


「シルヴィの魔法適性に聖魔法があったはずだけどそれの所為じゃないか?でもそうだとすると俺の妹もだめそうだな」


「そ、そんな!で、でも問題ありません。もしそうでも我慢します!安心してください。」


 胸をばるんと叩くディーネつい揺れる胸を見てしまった。



「じゃあ、シルヴィの所に行って本当に喧嘩しないで我慢できるか実験だ。」


 オレは、シルヴィの家に歩き始めた。今日は付いてくるなと命令していないのでディーネとしては付いてくるしかない。


 シルヴィは自宅の玄関で俺を待っていた。


「おはよう、シルヴィ」


「うん、おはよう、ところで今日はディーネさんいるんだね」


 少しいやそうな顔をするシルヴィ


「なんですか?その顔は私が積極的に友好関係を育んであげようと思ったのに」


「はぁ? 別に頼んでないもん勝手に友好関係を育もうとしないでくれますかぁ?エルビスだけいればいいもん! どっか行っちゃえ」


 シルヴィとディーネの喧嘩が始まった。こいつらほんと仲悪いな少し牽制を入れてみるか……



「喧嘩する人たちは嫌いです!」


 ピタリ、効果は劇的だったようで、先程までの喧嘩が嘘のように仲良くし始めた。


「「私たち仲良し!」」


 この二人面白いなもっと煽ってみよう。


「二人が仲いいと俺もうれしいな!」


 更に仲良しアピールが過激になる。二人がハグをし始めた。だが若干二人の顔が苦痛のように歪んでいるのがさらに面白い。


 そんな遊びをしていると背後から声がかかる。


「お兄ちゃん?」

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