第64話 強制異世界召喚と課せられた条件
取り敢えずパラパラっていると気になる記述があった。
『7/25我々は、錬金術という技術に、目をつけた。日本とはこの世の法則が違うらしい。魔法なんて使えなくても錬金術があれば生活に困る事はない。
錬金術は、最高だ。ある程度知識があれば、だいたいのことはできる。俺達、5人とも錬金術の魅力に取り憑かれた。
7/29 カイトが今日黒錬金術と名付けた技術を持ってきた。誰からか分からないが教えてもらったらしい。黒錬金術は魔法を使って錬金工程を強制的に捻じ曲げる。自然の力が錬金板や錬金釜に集約してその自然エネルギーをリリースせずにそのまま錬金物に注ぐので強大な力を錬金物に与える。
この力は危ない私は、全員に警告したが聞く耳を持たない。本来の錬金術は自然の力をリリースするから均衡が保たれているのだ。それをそのまま使うなんてとんでもない。
8/10四人は完全に黒錬金術とやらの魅力に囚われた。朝晩問わず、ずっと錬金術を行使している。魔力がない彼らが黒錬金術を行使できるのはおかしいと思っていたがどうやら黒錬金術を伝授した誰かが魔力を付与する黒い石を与えたらしい。
10/9? 前回の日記からかなり日が経ってしまった。あれから色々あった。まず黒錬金術を行使し続けた4人の内3人は魔物になった。真っ黒な魔物だ。そしてカイトは逃げた。その後すぐ大量の黒い魔物が湧き始めた。通常とは違いありえないほど強い。俺はこの部屋から出られない。もうここで餓死するのを待つしか無いようだ』
ここで日記が終わっていた。どうやらここが黒錬金術発祥の地だったらしい。魔物のレベルが高いのはそういうことなのかもしれない。
「もうここを出よう。ここにあるのは錬金術の極意かもしれないけど多分黒錬金術の本だろ。俺は黒錬金術の発展に手を貸す気はない。回収した本は全部焼却していこう」
その後すぐに本はすべて焼却した。日記は俺が持っておこう。
「マスターこんなに短いダンジョンなのになぜ今まで人が来なかったのでしょう?」
「確かにそうだね……魔物が強かったのはあるだろうけどそれでも不自然じゃ?」
ディーネとシルヴィの疑問に答えるかのように、その時脳内に声が響いた。
『お前はそれを選ぶのじゃな……黒錬金術を完全に習得すれば世界すら手中に収めることも可能だろうに、いいじゃろう、第一の試験は合角じゃ。次の試験はソナタの実力を見せてもらう』
そして景色が一転した。俺の目に入った景色は薄暗いダンジョンから明るい外に出てきた。だが、俺がいた世界とは完全に違う。生えている植物が白亜紀の植物に近い形状をしている。
空気もかなり違うなんというか自然の匂いがはっきりと分かる。
「ディーネこれはどういうことだ?」
俺は背後を振り向いたがディーネもシルヴィもいなかった。
『安心するのじゃ、彼女らはダンジョンの外に出しておいた。用があるのは主だけじゃからの』
脳内に声が聞こえるが声の主の居場所は見つからない。
『ここに一つ世界を作り出した。この中で条件をクリアし、妾を見つけるのじゃ』
「おい!勝手なことを言うな! 元の世界に戻せ!」
『クックック、それは無理な相談じゃ。妾はぬしの事を気に入ってしまったからの……分かるか? あの黒の魔窟には黒錬金術の極意と呼ばれる本があった。妾がそれに気がついたのは9年前じゃ、そこから拠点をこちらに移してあの研究所には入れないようにダンジョンの空間を捻じ曲げていた』
話しかける声がだんだん苛ついたものになっている。
『妾が直接手を出す訳にもいかんからの、人間の手で焼却させようと心の澄んだ人間や見込みのある人間も見つけては、研究所に連れてきていたんじゃ。だが奴らはここが黒錬金術発祥の地と気がつくと、欲望に飲まれ黒錬金術の知識を回収して外に持ち運ぼうとしたんじゃ、許せるか? あの技術は人間産の技術じゃない邪神が悪意を持って流した技術じゃ。ここで食い止めなくてはいけないのじゃ。それなのになんにも考えずに技術流出させようとしよって! 国も国じゃ、いい加減にあの強個体が出る理由に気がつけバカども』
脳内に語りかけてくる声がどんどんヒートアップしてきた。音量も大きくなってきて、頭が割れそうだ。
『うがああああ、腹立つのぅこっちが、どれだけ頑張ってると思っとるんじゃ』
ストレス溜めてそうだな……少しくらいなら手伝ってやるか
「わかった。分かったから落ち着け、お前を見つければいいんだな?」
『お、うむ。そうじゃだな、ただ見つけてもしょうがないぞ? 条件をクリアして妾を見つけるのじゃ、条件をクリアしたら、妾の位置も分かるじゃろうから気にするな、じゃあ頑張り給え』
脳内の声が途切れた。この白亜紀の世界そっくりな場所に取り残された。
後ろのほうから物凄い大きな動物が近寄ってくる足音がする。ゆっくり振り向くと背後には俺の体と同じくらい大きな口が見えた。
とっさに回避する。そして後方に撤退すると噛み付いてきた敵の全身像が見えてきた。そう、この白亜紀みたいな世界にピッタリな巨大動物ティラノサウルスだ。
「まじかよ……」
『龍魔法:火』
俺の真上に出現した龍から全てを燃やし尽くす業火が発された。そしてズンと言う音がした。力尽きたか? だが再びズンと言う音がして業火の中から無傷のティラノサウルスがでてきた。
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