第60話 シルヴィさんご入場
翌日、教室の中がザワザワと騒がしい。俺はクラウドの机に歩いていった。
「この騒ぎなんだ?なんかあったのか?」
俺がそう聞くとクラウドが話をしてくれた。どうやら転校生が来るらしい。しかもこのEクラスに来るとは可哀想な人だ。今このクラスはクラス対抗線に負け、ボロボロの教室だ。そのせいもあって俺とクラウドとサレンさんは未だに睨まれているわけだが……
「はい! 着席、みんな聞いたかもしれないが、今日は転校生の紹介をするぞ。おめでとう男子諸君女の子だ!」
テンションをあげ猿のように叫ぶ男子を見る女子の視線はとても痛い。
「入ってきなさい」
ヴァリオン先生がそう言って入ってきた女の子は、金髪サラサラヘアの碧眼超美人のどこかで見たことある女性だった。というかシルヴィだった。6年ぶりに見たが6年前に見たシルヴィの姉とそっくりで、より可愛らしく、正直どストライクだった。
「はじめましての方ははじめまして、シルヴィ・ローレンと申します。短い間ですがよろしくおねがいします」
シルヴィは俺をガン見しながらそう言った。昔はこんな状況なら周りに構わず俺に突撃していただろうから成長したんだろう……ところで勇気の泉にいたから半年間シルヴィと連絡取れていなかったことになる。怒っているかもしれない。
「はい、じゃあシルヴィさんは、そこに座ってね」
そう指示されたのはクラスの後方、俺の席から一番遠い席であった。もうシルヴィがこちらをガン見しすぎて他の生徒も何を見ているのかとこちらを見ている。
シルヴィは俺から一切目を離さず自分の席についた。何となくそのシルヴィがガン見してくる光景は面白い。そのまま授業が始まった。本日の内容は魔法の複合についてだった。軽く聞き流している間に一時間目が終わる。
他の生徒がシルヴィに群がるより早くシルヴィが笑顔でこちらに接近してくる。逃げることもできずシルヴィが俺の机の前に来た。そして怖い笑顔で俺に話しかける。
「久しぶり……エルビスどうして半年間連絡くれなかったか教えてくれるよね?」
シルヴィが黒い笑顔で俺に詰め寄り机を一度強く叩いて聞いてきた。
「ど、どうしたシルヴィそんな顔していると可愛い顔が台無しだぞ」
シルヴィの怒りをそらすためにそんな事を言ってみた。思ったより作戦はうまくいった。シルヴィは顔を真っ赤にしてフラフラし始めた。
「はっ! 危ない! 昔みたいにはぐらかされるところだった。騙されないぞ」
シルヴィが突然現実に帰還した。昔のようなごまかし方はできないようだ……でももう少し遊んでおこう。
「俺は、幼いちょろいシルヴィが(友達として)好きだったんだけどな……シルヴィも大人になってしまったか」
「うぐっ、ちょ、ちょろいよまだ。もう怒って無いもんエルビスのこと許したもん」
下手くそな作り笑いで、誤魔化すシルヴィ内心連絡しなかったことを怒っているのだろうかなり引きつった顔をしている。
「大人になったな」
つい思ったことがポロリとこぼれ落ちた。今の俺のシルヴィに振った話を総合してシルヴィは俺のことを幼女好きとでも勘違いしたのだろう、急に焦った態度を見せ始めた。
「ちちち、違うよ?私まだ子供子供」
「そりゃそうだろ……俺達まだ十二歳だぞ? 中身はもっと上だが……身体年齢は12歳だから子供だろ」
そう言うと落ち込んだ表情を一転させ嬉しそうに微笑む。
「あの、シルヴィ……俺幼女好きじゃないからな?ディーネと同じくらいまで成長しないとそういう対象にはならないかな」
シルヴィは嬉しそうにいじっていた髪から手を離しワナワナと震えだし口をパクパクし始めた。すまんなシルヴィ、君の容姿は、どストライクだけどまだ若い……と言うより犯罪をしている気分になるから無理です。
「じゃじゃあ、私が大人になったって証明するから明日の光の日街に遊びに」
「あ、明日は無理なんだ用事があるから来週の光の日に遊びに行こう」
そう言ってシルヴィの顔を見ると、真っ青になってヴァイブレータのようにブルブル震えていた。
「ままままま、まさか………女!」
「いや違うけど……先生に頼まれたんだよ」
「へ~何を頼まれたの?」
シルヴィが目を細めジリジリこっちに寄ってくる。
「いや……別に少しな」
「少し何?」
「えっと、ダンジョン探さ……」
「私も行く!」
俺が言葉を言い切る前に割り込む様にそう言った。だから言いたくなかったんだよ。
「あ、あのエルビス君? そちらの転校生とお知り合い?」
俺とシルヴィの話を聞いてクラウドがおどおどと聞いてきた。
「まぁ幼馴染みたいなもんだなぁ」
「エルビスうれしそう」
サレンさんがあまり興味がなさそうに俺にそんな事を聞いてきた。
「え! エルビスうれしそう? どんな感じでうれしそうなの?」
シルヴィがサレンさんに飛びつき色々質問攻めにしている。サレンさんがシルヴィの質問攻めに押されて混乱している。
「はい、二限目始まるぞ! 席につけ」
ヴァリオン先生の掛け声が聞こえシルヴィに話しかけようと俺達の周りをうろちょろしていたクラスメイトがみんな席に戻った。その日は放課後まで普通に過ぎ去った。
その日の授業が終わり帰ろうとした時、シルヴィが他の生徒を振り払い俺の所まで来た。
「エルビス一級生徒なんでしょ? 私も住んでいい?」
唐突にそんな事を言ってきた。
「いや、寮があるだろ? そっち行けよ」
シルヴィがパンフレットを見ながらとあるページを指差す。
「ここに、一級生徒は同居人を一人だけ選べるって書いてあるけど誰か同居人いるの?」
「いないけど……」
「じゃあいいじゃん!」
そんな流れでうちに同居人が一人増えた。
「マスター! なんでその女が家に来るんですか! 駄目です! 不埒です」
珍しく家で待機していたディーネが帰ってきた瞬間にものすごい猛反対をしてきた。
「諦めてくれ……俺も止められない」
どうにも既に俺の逃げ道をどんどん奪われている気がしてならないな。俺は、ニヤニヤしているシルヴィを見ながらそう思っていた。
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