第10話 魔法練習

 シルヴィは顔を赤らめ、ずっとどこかを見ている。


「おい! シルヴィ? 大丈夫?」


 そう言って頬を叩く。するとパチっとシルヴィの目に力が入った。


「はわ! エルビス! その、えと、あのありがと」


 まだ混乱しているっぽいそれも、仕方ないあんな狼に襲われたんだ。しばらく優しくしてあげよう。


「やるじゃねぇか……エルビス、かっこいい勇者が女の子を助けてノックアウトしたってところか?」


 シルヴィが正気に戻るのを待ち声を掛けた。


「どうする? 今日は帰るか?」


 シルヴィは顔を横に振る。


「大丈夫、狼さん来てもエルビス守ってくれるし一緒に遊ぶ!」


 そう言って、笑った。シルヴィがそうしたいって言うなら俺も魔法の練習をしよう。


「シルヴィは何するんだ?」


「エルビス君がしたいことする!」


 そうきっぱりと言った。シルヴィ、じゃあ今日は付き合って貰うとするか。


「なんだ? エルビス魔法を練習するのか? 俺が教えるぞ?」


「本当ですか? 是非お願いします」


 俺がそう言うとシルヴィが俺をポカポカ叩いてきた。


「私も教えるぅぅぅ」


「いや、シルヴィは俺に何も教えられないだろ?」


「私エルビスみたいな事しないもん。ほら見て!」


 シルヴィが無詠唱でロウソクくらいの火を発動した。あれ、知らない間に魔法使ってるじゃん。


「ま、まぁ今回はカインさんに教えてもらうよ、シルヴィはまた今度な」


 シルヴィの頭をなで、ご機嫌取りをする。


「ふむ、じゃあまず詠唱魔法を使って魔術の基本を練習しよう。『火の精よ。我に力を与え給え:ファイアー』こんな感じだ。やってみろ」


 何だその詠唱かっこいな


『火の精よ我に力を与え給え:ファイアー』


 手に火が灯った。


「おう、まさかの一発か……生活魔法はうまくいくようだな。次は戦闘魔法打ってみるか。俺の真似をしろ」


『火の精よ。我に敵を打ち倒すための力を与え給え:ファイアーボール』


 カインさんが火の玉を作り出し遠くの木に飛ばした。俺も真似しよう。


『火の精よ。我に敵を打ち倒すための力を与え給え:ファイアーボール』


 そう、詠唱すると魔術支配が反応した。途中まで火球が生成されていたが、突然手乗りサイズの龍になった。子供の龍だ。少しかわいい。


「お、おい。エルビスそれはまさか……」


 俺が龍を作り出したことで、後退りし始めた。


「え、エルビス……」


 シルヴィも俺から離れていく。


 その瞬間、子龍がファイアーボールを放った。直撃した木が木くずも残さず吹き飛んだ。


「お前、戦闘用魔法を使おうとすると龍になるのはなんでだ! もう生活魔法しか使うなよ」


 そう言ってどこかに……というより山火事になりそうな火を消火しに行った。


 でも魔法を使いたいという好奇心は止められない子供だからな! さっきの要領で……


『水の精よ。我に力を与え給え:アクア』


 俺の前に攻撃用ではない水球が生まれた。ちょうど喉がかわいていた。少し飲もう。


「エルビス……私も飲んでいい?」


「いいぞ」


 シルヴィが水を飲むと足にあったかすり傷がどんどん治っていく。


 回復の泉にずっといたから水が回復の効果を得たってことか? だがそれは使いづらいタイミングもありそうだ。攻撃用の水魔法を使って敵を攻撃したら回復しちゃいましたなんて、目も当てられない。なんとか両立させられる様に練習しよう。課題が多いな。


「さっきの水魔法、攻撃用の普通の水と回復の水使い分けられるようになりたいから付き合ってくれないか? できればシルヴィに付き合ってほしいんだ」


 シルヴィが顔を真っ赤にしてつ、つき、つきあ、などぼやいている。青春してるな。俺は完全に他人事だ。赤面したシルヴィを放置し魔法の練習を始めた。


 とりあえず頭を冷やしてもらおう。水魔法で水球作くろう。普通の冷たい水を意識するが俺の中で水といえば回復の水というイメージが染み付いていて離れない。


 イメージに意識を回しすぎて、作った水球が、シルヴィの方へふわふわと飛んでいた。そして、水球はシルヴィの顔に当たってしまった。


「あ、ごめん! しかも失敗しちゃった。」


「ううん、いいよ! 気にしないで! もう一回やってみよ!」


 正気に戻り服をビショビショにしたシルヴィはそう言った。


 俺とシルヴィの練習は夕方まで続いた。今日はシルヴィに付き合ってもらったので最後の最後で回復の使い分けに成功した。明日はシルヴィの魔法の練習をしようそう心に決め、疲れ果てへとへとになりながら家に帰る。


「おかえりエルビス。ご飯あるからこっちにおいで。」


 俺の両親は俺が帰ってきてからずっと優しい、嘘をついているのは悪いと思うが事情を話せば面倒な事になってしまう。帰ってきてから両親とはかなり距離ができてしまった。


「おうエルビス。俺が消火活動している間イチャコライチャコラしやがって後、魔法練習したろ? 魔法の痕跡がバッチリ残ってたぞ。俺がいるところで練習しろって言ってるだろ、明日は俺少し出るから変なことするなよ」


 翌日、シルヴィは俺の家に待機してきた。早い、俺は眠くてまだフラフラしている足をシルヴィの方へ向けた。


「おはよ! エルビス! じゃあ裏山いこ!」


 そう言って手を引くシルヴィ、眠いよ、せめて歩かせて……裏山に着いた瞬間、俺は、二度寝をした。あぁ二度寝最高……数時間後、目を覚ますとシルヴィに膝枕されていた。


「あ、起きた? も~二度寝とかだめだよ。もうお昼だよ全く! とりあえずお昼ごはん作ったんだけどいる?」

 

 そう言っていい匂いのするサンドイッチのようなものを渡してくれた。


「おお! 美味しそう!」


 あっという間に俺の分は食べてしまった。


「美味しかったよ!ありがとシルヴィ! 今日はシルヴィの魔法の練習するから、頑張ろうな!」


「うん! エルビスよりうまくなちゃうもんね!」


「ところでこのサンドイッチ本当にシルヴィが作ったのか?」


 そう言うと手でピースをしていたシルヴィが気まずそうに手をゆっくり降ろしていく。あ、これは……


 何となく察してしまったので、話をそらしてシルヴィの練習したい魔法について聞いてみた。どうやらシルヴィは火の魔法を練習したいようだ。   


『ファイアー』『ファイアー』『ファイアー』


 最初は火種程度しか出ななった火か回数を重ねるごとに大きくなっていく。


 俺は、たまにアドバイスをする。しばらくすると久しぶりに頭の中にアナウンスが聞こえた。


「教育指導ブースト (中)獲得」


 教育指導ブースト:このスキルの持ち主が教えた内容は生徒の成長率に対し大きく影響する。


 ずっとシルヴィに教えていたので獲得したようだ。先程からどんどん上手くなると思っていたがシルヴィの上達っぷりは俺の影響だったらしい。


    エルビス(6歳)


 レベル32

 魔法特性 火、水、風、土、闇、光

 スキル 

 ・苦痛完全無効、

 ・無詠唱

 ・スキル取得難易度低下

 ・スキル経験値増加

 ・スキル限界突破{ユニーク}

 ・鑑定

 ・魔術支配 (中)

 ・精神ダメージ完全無効

 ・超物理防御 (特大)

 ・破壊属性付与(特大)

 ・体力自動回復 (極大)

 ・超攻撃力上昇 (大)

 ・魔力自動回復 (小)

 ・臓器操作

 ・教育指導ブースト (中)

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