第11話 女風呂侵入作戦

 今日は村の男子たちが集まっている秘密基地にいる。強制集合らしい、シルヴィと遊ぶ約束してたんだけどな……あと何故か子供の集会にカインさんがいる。


 朝一で村の子供達に無理やり腕を引っ張られて、この秘密基地に連れてこられた。元々こいつらにいじめられていたはずだ。だからこそシルヴィを仲良くなれたと言ってもいいのだが‥‥


「この作戦の要は魔法が使えるエルビスだ! エルビスを使い週に一度、解放される公衆浴場に向かう!そこに俺たちのオアシスがある! 俺たちはやるぞ!」


 リーダーっぽい男の子が大げさに演技をしながら俺に指を指す。正直俺はこの場に居づらくて、今すぐに帰りたい。


「「「「「おーやるぞ!」」」」


 馬鹿なのかこいつらあほらしい、あとカインさんなぜ貴方も覗く気満々なんですか! 大人だろ! 自重しろ。シルヴィと遊ぶ方がよほど有意義だな。帰ろう。


「おいおいエルビス! お前ひとりでオアシスを見る気か? やらせんぞ!」


 村の男子が俺を囲む、やめろよ暑苦しい、俺はロリコンじゃない! 申し訳ないがシルヴィに欲情することはない。もう少し成長してから出直すんだな!


「そうだぞ! エルビス俺はお前に色々、教えてやったよなぁ。少しくらい見返りをくれてもいいんじゃないか?」


 カインさんが俺にそんな事を言ってくる。子供を脅すのか! 最低だ!


「シルヴィの姉の裸見れるかもよ?」


 ポツリと坊主頭の男の子がささやく。シルヴィの姉は16歳あの容姿正直どストライクだ……仕方がない純粋な子供たちとゲスな大人の願いを叶えるのも良い大人の仕事だ。まぁ俺6歳だけど。


 そして俺たちは作戦を決行した。現在時刻は16時、村の女性たちが次々に公衆浴場に入っていく。


 さて具体的な内容だが光魔法を使う。光を屈折させ外部から見えないようにさせるのだ。後は煩悩まみれの男子共がお風呂に突っ込むのを見るだけだ。


 村の男子のリーダが掛け声をかける。


「行くぞ! 作戦決行だ!」


「「「おー」」」


 俺たちは体に迷彩を掛け風呂場に侵入した。そこに見える裸体の楽園に皆興奮しているようだ。メモを取る者、絵にしようとするもの、記憶に残そうと凝視する者、色々いた。


 そしてカインさんは、謎の結晶を持って結晶を覗き込んでいる。


「カインさん。それは一体なんですか?」


「ああ、これはな……保存の結晶というものだ。超高いんだぜこれ30万リートしたんだ。今回の黒ローブ討伐のための証拠として買ったんだが……もっと有益な使い方ができて俺は嬉しいぜ」


 リートというのがこの国の貨幣制度だ。一リート=一円だ。


 さて俺も、シルヴィの姉を探そう。そう思いきょろきょろしていると、なぜか公衆浴場にシルヴィがいた。冷静に考えてみれば、自宅に風呂があるのにシルヴィはここに来る必要はない。つまりそれはシルヴィの姉も同じだ。


 だがシルヴィはここにいる。そしてこちらを見ている。昨日魔法を教えメキメキと魔術の腕を伸ばし、火属性魔法の制御に関しては俺よりうまい。そんなシルヴィがこちらを凝視している。


 やばいかもしれない俺にも魔力の偽装はまだできない。これはバレたかもしれない。急いで逃げようとすると俺が風呂場から出ようとするとカインさんがオレの肩を掴んだ。


「おいおいこの楽園からもう出るのか? もっと見ようぜ! 後で俺の成果も見せてやるぜ」


「馬鹿! 見て下さい。シルヴィがこっちに来てます。あれ気づいてますよ!」


 そう言って手を振り払ったがもう遅い。シルヴィがこちらにというか俺の方に一直線に来る。


「じゃあな! エルビス。生きてたらまた会おう!」


 カインさんが逃亡した。


 そして、シルヴィにガシッと肩を掴まれた。あ、終わった。体にバスタオルを巻いた状態のシルヴィに引きずられ風呂場から追い出された。


 他のバカどもはシルヴィの姿に興奮して事の重要性に気が付いていない。


 俺は、浴場の外に投げ飛ばされ、逃げることもできず、そのまま待機していると服を着たシルヴィが出てきた。体から発される怒りのオーラは過去最高だ。


「で? どういうことかな? エルビス君?」


 シルヴィは声を震わせながら笑顔でそう言う。


「いやあの男子たちとカインさんに無理やりやれって言いました。」


 即座に俺はすべての責任を男子たちとカインさんに押し付けた。すまんな! 俺はここで死にたくないんだ! あとカインさんは同じ目にあってもらう!


 するとシルヴィは安心したように言う。


「よかった! エルビス君が自分の意思でやってたら、私の一族に伝わる性格矯正術を行使しなくちゃいけなかったよ」


 といった。怖いので具体的には聞かないが性格が変わるほどの何かを受けるという事だろう。こわいです。


「じゃあ、いま迷彩掛けてる男子たちの魔法解除してくれるかな?」


「え? 解除なんてしたらバレるじゃん?」


 シルヴィは何を言ってるのという顔をした。


「え? だってあいつらエルビスに変なこと教えたんだよ? これでエルビスが変態になったらあいつら許さない。今回は私が守ってあげるから早く解除して、まさか男の友情とか言って守るつもりじゃ・・・・」


 あいつらは同士だ同じ目的を持った仲間だ。裏切る訳には・・・・そう思っているとシルヴィが


「解除してほしいな……」


 とうるうるした瞳と泣きそうな声でそう言った。もちろん俺はシルヴィを怒らせないために即座に解除した。その瞬間悲鳴が聞こえた。


 浴場から叫び声や悲鳴が聞こえている間、俺は約束をすっぽかした事含め数時間説教くらった。


 だが作戦を立案した男子たちよりは、はるかにましだ。あいつらは、裸で丸一日晒された。俺はシルヴィに全力で守られていた。男子たちが裸でつるされている間の丸一日俺は、シルヴィに腕を掴まれ行動を共にした。


 カインさんは、罰としてハンツ一丁で一週間村の護衛を無償でやることになった。


 俺はと言えば、シルヴィがなんと言ったがわからないが、村の女性陣には慰められた。貴方は悪くないわ! あいつら変態が悪いんだからと、シルヴィは何と言ったのだろうか?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る