第71話 知らぬが仏
「マスター、ヴァリオン先生はあの時の黒ローブの男なんでしょうか?」
「多分な……同じ日記を持っていたってだけで違うのかもしれないけど……油断はできなくなった」
「エルビス……何の話してるの? 黒ローブって何」
シルヴィの記憶を保存した保存の鏡は鏡を見た部分までの記憶しかセーブできない……シルヴィが鏡を見たのはあの事件の数日前、つまりシルヴィは黒ローブの男について何も知らない。教えるべきだろうか?
もしヴァリオン先生が暴走した時再び俺が命を対価に時間を巻き戻すかもしれない。今度はリセットポイントが回復の泉の中ではない、つまり回復の秘術を使用したら俺は死ぬ。その時の対策の為にシルヴィの記憶を鏡に保存しておくべきなのかもしれない。
「なぁディーネ? もしまた時間を巻き戻したら俺は死ぬよな、その時俺の死体はどうなるんだ?」
「え、もしもの話ですか? 巻き戻した先で対価を払って寿命を消費させるので巻き戻ったその場で……」
「そうか……じゃあ明日保存の鏡を買いに行くか。シルヴィには一応この時点までの鏡を持ってもらおう」
「マスターがもし時間を巻き戻したら、マスターの命が尽きる前に私が回復させます」
ディーネが自信満々に胸をたたいてそう言った。
「まぁそうできたらな、期待しないでおくよ」
「なんでですか! マスター酷いです私頑張ろうとしてるのに……」
「え、うんまぁ俺が回復の秘術を使わないように気おつければ良いんだよな」
「そうじゃの、ディーネは大事なところで失敗するからの、妾のヴァリオンとやらのうごきには気をつけておこう。じゃがやつからそんな邪悪な雰囲気を感じはしなかったのじゃがおかしいのぅ」
「ねぇだから、だれ? その黒ローブって」
「シルヴィもしつこいな後で話すから……」
「う、うん」
シルヴィはこのシーネとの会話中ずっと俺に黒ローブってだれ? と連呼していたのだ。大事な話だから後で話したかったのにしつこい物だ。全く
その日は、シルヴィに軽い説明したあと寝た。翌日シルヴィを連れ街に出た。クラウドも一緒だ。学校から出ようとした時たまたま出会ったので一緒に町にくことにした。
「エルビスくんは今日何を買いに行くの?」
「保存の鏡……」
「え……あの老人用アイテムを?」
「そうだよ。 俺じゃなくてシルヴィに買うんだよ」
「え、シルヴィさん大丈夫?」
「ちちち、違うよ! そんな記憶力がないとかじゃないよ」
シルヴィが俺の前に出てきて必死に否定し始めた。
「分かってるよ、シルヴィさん。エルビスくんが変なことを考えたんでしょ?」
「う、うんそうだよ。私が使うらしいけど……」
「へ~何に使うんだろう? 記憶を保存する必要があるようなことかな……」
「まぁ色々さ、あんまり気にしないでくれ」
「そっか……ところでエルビス君にベルガナ王国の王宮が目をつけてるらしいよ。あの黒魔種バジリスクを単独討伐したエルビスになにか頼みたいとかかな? どちらにせよ近い内に王宮の干渉があると思う。気を付けたほうが良いよ」
「王宮が、俺に何の用だよ。なんか魔物討伐の依頼か? めんどくさいな。今それどころじゃないんだけどなぁ」
「うーんどうだろうね? 先代の勇者みたいに特例で若い内に冒険者にして早めにBランクに到達したら国の強制依頼を押し付けたいとかそんなところじゃない?」
「まぁお金がもらえるなら依頼は受けていいかな? 国からの依頼ならお金たくさんもらえそうだし」
「俗物的だなぁ」
クラウドがくすくすと笑う。突然シルヴィが俺の前に踊りでた。
「お金がほしいなら私がエルビスにあげるよ! 私貴族だから私と結婚したらお金いっぱい貰えるよ!」
やめろやめろ、クラウドがどん引きしてるじゃないか
「主様よ、これ狙えるぞ。逆玉の輿じゃ妾も色々甘いものとか食べたいのじゃ、主様は買ってくれないから悲しいのじゃ」
突然俺の剣から出てきたノータが俺の耳元でヒソヒソと話し始めた。
「そ、その人、どこから出てきたの……まさかその人も精霊?」
「あ、そ、そうだよ。ノータっていうんだ、おいノータ人前で突然出てくるな。ディーネも人前だから出てくるなよ」
(なんでですか! ノータは良くて私は駄目なんですか! 私も出ます)
ディーネが頭の中でガンガン騒いでいる。うるさい。まじうるさい。ミュートにしたい。
(マスターは私が嫌いなんですね。だから私が出たら駄目とか言っちゃうんですね。酷いです。私頑張ってるのに)
(ディーネがメンヘラムーブを初めた。分かったよ。そこの物陰に隠れるからそしたら出てきていいから)
(ホントですか? マスター)
俺はディーネを人前で突然出現させないために物陰に隠れた。隠れた瞬間俺の目の前にディーネが出てきた。
「ふふふ、私も甘いもの食べたいです。マスター買って下さい」
「ずるいのじゃ! 妾にも買ってくれ主様!」
ノータが巨乳を押し付けてくる。押し付けられた胸がグニグニ凹み、かなり不思議に気持ちになってくる。なんで俺こんなに胸押し付けられているんだ? シルヴィが反対の腕にしがみついてきた。成長過程の胸がグイグイ押し付けられる。数年前より胸も大きくなっているようだ。
「エルビス! 浮気禁止」
「あはは、エルビス君人気者だね」
クラウドがから笑いして俺をうらやましそうに見てくる。
「まぁクラウドもモテるって心配すんなよ。お、俺の目的地に着いたよだな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます