第21話 【急募】学園で死体を処理する方法【男性一名】
2人の学生が初夏の屋上にいた。
1人は白銀の髪の美しい少女。
もう1人は黒髪の平凡な少年。
「裏のありそうな事件だけど、表面上は解決ということになったわ。でも姉様は専門の調査部隊を立ち上げる準備をしているし、私も協力するつもりだからまだこれからね」
少女が言った。
「ほどほどにね」
少年が言った。
「というわけであなたの容疑は晴れたわ。迷惑かけたわね」
「それはいいんだけどさ」
2人の間に風が通り抜けた。少女のスカートが揺れて、白い脚があらわになる。
「クソ暑いから中に入らない?」
天気のいい本日は、真昼の太陽が燦々と照りつけてくる。 二人の足から濃い影が伸びて、遠くからはもう夏虫の声が聞こえてくる。
「待って。二点、言っておきたい事があって」
「ここで?」
「ここで」
少女は目を細めて青い空を見上げた。
「一点目、一応感謝の言葉を言っておこうと思って。前に、私の剣が好きって言ってくれたでしょ。遅くなったけど、ありがとう」
「いいよ、別に」
「ようやく自分の剣が好きになれたの。あなたのおかげじゃないけれど」
「一言余計だとは思わない?」
「事実だから」
2人の視線がぶつかった。先に視線を外したのは少年だった。
「まぁでも、好きになれたんならよかったんじゃない」
「そうね、よかったわ」
少女は微笑んだ。
「それで二点目は?」
「これまで付き合っているふりをしてきた訳だけど、今回の事件でゼノンが死んでくれたから」
「僕はようやくお役御免って訳だ」
「そこで一つ提案なんだけれど」
少女はどこか言い辛そうに言葉を探す。
「もし、あなたさえ良ければ……」
少女の赤い瞳がキョロキョロする。
「もう少しこの関係を続けてみないかなって」
少しだけ、小さな声で少女は言った。
少年は爽やかに微笑んだ。
「お断りだ」
中指を突き立てて、少年は言った。
少女がスラリと剣を抜いた。
夕方、この屋上に訪れた生徒はそこで大量の血痕を発見する。
しかし多量の血が流れているにもかかわらず、遺体は付近に見当たらなかった。生徒や学園関係者を調べても、重傷者や行方不明者は存在せず事件は迷宮入りとなる。
後に、この事件は『死体のない殺人事件』として学園七不思議になるのだった。
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