第41話
バスに乗れば見えてくる白銀の世界。ここは、いつか見た世界。千歳の住む街。季節は真冬だ。
雪が田畑を輝く白に変えている。
青い空はどこまでも続き、盆地のこの街を白く、遠くの山は灰色に染め上げている。知っている世界が、見慣れた景色が早回しで過ぎていく。
少しの恐怖を心の底に潜めた。
わたしの家はどこ。
「ねぇ千歳、知っている。雪はね、木々の木の葉が落ちて、誰も出歩かなくなった寂しい世界を、白く輝く、とっておきの世界に変えてくれるの」
バスの窓を白い粒が叩く。雪が舞っているのだ。
晴れているのに舞う雪は、風花というのだとその人が教えてくれた。
「わたしも祈るの。誰も帰ってこない家を、誰の姿も見えない世界を、雪よ、白く変えてください。降り積もって、とっておきの世界に変えてくださいって」
声にならない声で問いかける。
ねぇ、帰る場所はどこ。どこに行こうとしているの。誰も帰ってこない家に行くの。
誰の姿も見えない世界に行くの。
・・・わたし、そんな場所には行きたくないよ。わたしの帰る場所はそんな場所ではないのでしょう。
わたしとあなたが向かうのは、寂しい場所なの。
ねぇ、答えて。
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