第36話

不思議と心が軽くなっていくのを感じていた。

なんだ。

試験管ベイビーでも、こんなに普通に誰かと話せるのか。


目の前の和菜が何者なのか、視界がぼやけて見えてこない。


「それにしても、千歳ちゃん、今日は、瑠奈ちゃんとかと一緒じゃなかったんだね。一人でいるのなんて珍しいね」

「うん。まぁ」


「ふうん。まぁ、瑠奈ちゃんとか、いい子ぶってるけど、試験管ベイビーのこと嫌な感じだと思ってるから、露骨に態度に出ちゃったのかもね」

「そうかぁ。そうかもね。わたし、可哀そうな生き物の試験管ベイビーだから」


「可哀そうかな。わたしはそうは思わないけど。なんかカッコいいじゃん。人造人間ってカッコいいよ」


酷い事言うな、と千歳は思ったが、そんな今この時に不都合なことは無視した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る