第35話
赤い横断幕が開く。
舞台の主役、陸の上の王子様に恋をした人魚姫は、恋をしたまま。
痛い思いをして人間になることはありませんでした。
傾きかけた日の光をその身に浴びながら、千歳と和菜は帰り道を二人並んで歩く。
太陽の前を通り過ぎた、飛んでいったあの鳥の名は?
「和菜ちゃんは聞いたの。わたしが、試験管ベイビーだって」
その答えを待つ間の少しの沈黙が、重く、そして怖かった。
「聞いたよ。先生がいつだか言っていた試験管ベイビーって千歳ちゃんだったんだね」
「うん。そうだよ」
「先生って、誰かが相談ごとすると決まってクラスのみんなに発表しちゃうんだよね。何でかわかんないけど、しょうがないよね」
「わたしは、ちょっと酷いと思うけどね」
「そうだね。まぁ、わたしの時もそうだったし、しょうがないよ。先生ってそういうものなんじゃないのかな」
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