第93話
ふと、千歳は、和菜の手元を見た。
そこには、連絡帳と学級通知と、昼に給食に出たパンがあった。これから和菜は、これを学校を休んでいる誰かに渡すのだろう。多分。
「それ、和菜ちゃんの弟のもの」
和菜はそれを聞かれて、持っている連絡帳やらを上げて見せた。
「そうだよ。弟がね、病院から家に帰ってきているの。今日は体調悪くて休んでいるんだ。だから、今日の分の連絡帳と給食のパンだよ」
「へぇ。帰ってきて嬉しいでしょう」
「そうだね。でも、ちょっと複雑かな。お母さんは、弟に付きっ切りなのは変わらないし、やつはなかなか手がかかるし」
「弟嫌いなの」
「そうじゃないよ。というか、嫌いでも、嫌いだなんて言えないよ。弟だから」
「ふうん。わたし兄弟いないからよく分からないよ。でも、いいね。兄弟がいるって、憧れるな」
「やつはなかなか手のかかる弟だけどね」
千歳は、手のかかると言いながら、少し嬉しそうな和菜に、本当に憧れを抱いた。
自分には兄弟がいない。
それは、自分の両親に、もう一人二人作り出すだけの資金がなかったからであり、自分を作るのに金という現実的なものが必要だったことを思い起こさせることでもあった。
誰でも、子供にはお金が掛かる。しかし、作り出すのに普通は、お金は掛からない。千歳は、人造人間なのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます