第92話

声が聞こえた。

生まれたばかりの赤子の声。

いくつもいくつも。これは、いつかの昔、飼っていた犬が産んだ数匹の子犬を、母親と一緒に埋めた時の声だ。


必死に生きようとしていたのに無理やり土をかけて殺した。

父親も母親も、そうするしかないと言った。

雑種の犬は、貰い手がないし、家で飼うにしても数が多すぎるからと。


千歳は、考えてみれば、血統書付きだ。

母親は有名大学の女子大生。父親は、戸籍上の父親と血がつながっている。

頭が良くなる要素を持ち、育ての親に可愛がられるだけの血を持っている。


だけど、そんなのガラクタだ。


千歳も、ただ排出されただけの価値のない赤子なら、あの子犬たちのように土に埋められて殺させるのかもしれない。


本当の千歳は、ガラクタの寄せ集めだ。


いつか殺されるだろう。必要なくなったら、あいつらは、千歳を抹殺するのだ。

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