第74話

悲しいなんて、幻だ。

だけど千歳には言えない。アリガトウなんて。


言ってしまったら、こいつらは、生け捕りにした魔女の首を絞める気だ。


トモダチは、こんな時、千歳の味方をしてくれるはずだった。


あいつらから自画像を奪還し、千歳をかばってくれるはず。

しかし、瑠奈も、明美も、小枝もみんな同じ仮面をつけてこちらをにやにや見ているだけで、千歳の味方をする気配など微塵も見せない。


やっぱりだ。トモダチ契約書なんてもの、ただの紙切れなのだ。


トモダチだからと理由をつけて、自分は守られる者だと期待していたが、期待はあきらめに変わった。


しかし、千歳は彼女の姿を探す。


和菜の姿を。


その束の間、千歳の周りに煩い蠅たちが群がってくる。

にやにやブンブンと音を立てて、千歳の耳元を飛び回る。

何か言っているが、千歳には聞こえない。自分の声だけが響き渡る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る