第24話

早めに死んでくれてよかった。


あれは、千歳にも言っていたのだ。


理由、

そんなものはない。


玩具で遊ぶ子供が、その遊んでいた玩具に飽きるように、ただ、使い捨てるだけのことだ。



今日も、代わり映えしない日常が待っている。


「千歳ちゃん」

そう声をかけてきたのは、明美だ。

「おはよう」

機械的に出てきたその言葉。

この前、この子の悪口を言っていたことなんて、微塵も感じさせないのは、もう、忘れたつもりになっているから。



「ねぇ。千歳ちゃんって、試験管ベイビーなの」



扉が、音を立てて乱暴に開けられたかのような衝撃が、千歳の心に走った。

「え・・・」


真っ白になった。


光なのか闇なのかわからない、扉の向こうが見えない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る