第103話

母親は、そう言って、千歳の背中を押しながら玄関へと誘導した。

いつもそうだ。

母親が千歳の体に触れるとき、決まってこの場所から追い出す時だ。


この家という小さな箱から、千歳は追い出される。

本当のお母さんを探したあの雨の日も、そして今日も。


また、教室からも追い出されるのだ。

今までどこにあったのか思い出せなくなった。居場所なんて、そもそも最初からあったのだろうか。


そんな疑問をぼんやり考えながら、渡されたボロボロのままのランドセルと一緒に、家を出た。


気付いていないでしょう。

どんなことがあの箱庭であったのか。

知っていても、知らないふりが平気でできるのでしょう。


だって、玩具で遊ぶ子供が飽きるように、その玩具に見向きもしなくなるのと同じ。


ここから別の世界になんていけるのだろうか。

誰も居ない、嘘の咲かない、そしてこの世界にはない、わたしの紅い花畑が、どこかにあるのだろうか。

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