人魚姫
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第28話
マリオネットシアター 第三章 人魚姫
あの子だ。
彼女が視界に入ったとき、千歳は束の間、誰もいない四角い箱の中で茫然とたたずむ「あの子」を思い返していたが、その「あの子」は瞬く間に自分へと姿を変えた。
笑っていたのを見た。
明美は、斉藤君の後ろに引き下がり、潜んでいた。
その眼に鋭く光る嘲笑を宿して。
「千歳ちゃん、試験管ベイビーなんでしょ」
あれをきっと復讐というのだ。千歳が言った何者かへの悪口の復讐を果たした、その眼だった。
あの四角い箱の中には、人なんて自分以外どこにもいない。
やがて蠅となって羽ばたこうとするウジがわいているだけ。
だけど、千歳も、その中に生きる一人だったことを彼女は思い出させた。
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