第12話

ほんの少しの復讐。

「そうかもしれないね」


誰に対してのものだったのか。

明美に対してか、瑠奈に対してか。この感情をどこにぶつければいいのか分からない。

千歳の描く絵をキモいと言っていた明美に憎しみの感情を抱くのか、それとも、そんなことはでっち上げで、

内心千歳の描く絵をキモいと思っていたのかもしれない瑠奈に対してなのか。


瑠奈は自分の言葉を架空の明美に代弁させていたのかもしれない可能性をぬぐえなかった。


人を信じることなんか知らなかった。

信じるという言葉を知っていても、その意味を考えることさえしなかった。


そうかもしれないね

と、言ってしまったが、それは、明美を傷つける言葉であって、瑠奈を傷つける言葉で

はない。


しかし、他になんと答えることが自分の感情を吐き出すことになるのか、それも、知ら

なかった。

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