第13話

意味もないと思っていた。

腹の底で淀みきった内容物がざわめきだすような感覚。

見ないふりをしていた。後ろ向きの自分。


まだ、彼女は幼い子供なのだ。

きっと、瑠奈と明美、二人を傷つける言葉を同時に見つけたなら、彼女は大人になるだろう。

偽りの強さを持ち、人の感情に本当に鈍感な、残酷な大人に。



あのあと、瑠奈は千歳の視線の届かないところで、明美に告げ口していた。


「千歳ちゃんがね。明美ちゃんの絵、キモいって言ってたよ。わたしは、そんなことないんじゃないって言ったのに、千歳ちゃんって酷いよね」


瑠奈は、その瞳にどんな期待に満ちた気持ちを宿していただろう。

明美は、その好奇の瞳から隠れるように、うつむき、つぶやいた。


「・・・酷いよ」


うつむいた前髪の隙間から漏れる明美の視線は、鋭く、遠くで小枝と和菜と談笑する千歳を捕らえている。

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