第14話

うつむいた前髪の隙間から漏れる明美の視線は、鋭く、遠くで小枝と和菜と談笑する千歳を捕らえている。



これは、特別なことではない。

これが彼女らの日常なのだ。そうだ。普通のことだった。


誰かが誰かを嫌いで、誰かが誰かを貶めようとしていることは彼女たちにとって平和な世界の日常なのだ。


誰も疑問を持たなかった。

持つ理由もなかった。


マリオネットシアターは何度も繰り返された。紅色の暗幕が開かれると始まる物語。


一日が始まり、そして、終わっていく。


何も変わらないと思っていた。

これが一番の幸せだと疑うことをしなかった。

なぜなら、可哀そうな人と自分とは、違った世界に生きているものだと思っていたからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る