第64話

「おじいちゃんが言ってた。シカが何かを探している声だよ」


「そうなの」


仲間を探しているのだろうか。自分の食べるものを探しているのだろうか。自分の帰る場所を?


千歳は、再び和菜の顔を見た。

はっとした。


和菜の瞳が真っ黒で、どこを見ているのか、どこに焦点を当てているのかわからなかったのだ。

和菜もやられていた。

この森の魔性に。


それとも、鏡を見ているのだろうか。


ここには本当は自分の他に誰も居なくて、これさえも幻なのだろうか。


「きっと、コジカがお父さんとお母さんを探してるんじゃないかな」


自分のことを言っている。そう思った。

今は心の真ん中に鎮めたものに、的を定めて、射られたのだ。

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