第63話
だから、あの幻には屈しないよう心に言い聞かせた。
とても楽しかった。
想像の産物でしかないが、この恐ろしさが病みつきになってしまいそうだ。
空想だと分かっていても、心が躍る。
五感が研ぎ澄まされる。
聞こえてくる。
遠くで聞こえるあの悲しそうな声は何?
「シカが鳴いているね」
和菜は言った。
「これ、シカの声なの」
千歳は、初めて聞く声に興味深々だった。
クルルル。
聞こえる。
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