第118話

目が覚めると四角い天井があった。

ここは、病棟の一室。

大人たちの話によれば、ここは児童心療内科の病棟らしい。

あの街よりもっとにぎやかな、県の中心部にある街の国立病院にいた。


あれから、千歳の周囲は、高速で回転しだした。

大人たちがこれからの千歳について話し合った。

千歳だけを置き去りにして。


この部屋には、廊下へと続くドアに警報装置がついており、外に出ようとするとベルが鳴る仕組みになっていた。

だから、千歳は、この部屋に閉じ込められたままになっている。


外で声がする。

「先生が、わたしをまた家に帰そうとしているよ。わたしは帰りたくないのに。交換日記で、そろそろ学校にも戻った方がいいんじゃないって言ってた。わたし、学校に行きたくないよ。ねぇ、どうすればいい。先生は信用できないよ」


どうやら、ここに入院している子の声らしい。

この子がどんな経緯でここに来たのかは分からないが、この子は、家にも学校にも居場所がないことがわかった。


千歳は、ただそれを淡々と聞いていた。聞き流した。

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