第32話

こんなに新鮮な気持ちになるなんて、まるで、初めて出会ったときのよう。


飛び出そうと思えば、飛び出せる学校は、鉄格子と鍵付きで出られない。

閉じ込められたまま、彷徨うのは、それでも逃げ場を探していたから。


逃げたのではない、自分を守っただけのことだと言うひとは、もしかしたらいるのかもしれないけど、そんなの言いわけだ。


自分を守ることが、こんなにかっこ悪いことなんて、千歳にとっては、幻滅なのだ。


偶然にしてはできすぎているけれど、本当になんの考えもなく和菜の前に来ていたのだ。



いや、和菜が千歳の前に現れたのだ。


いやな感じがすると、次にどんなにいやなことが起こるのかワクワクしてしまう。


矛盾した感情に、なすすべもなく身を委ねる。

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