第54話

テレビの砂嵐のような音が聞こえる。

もうずっと鳴り続けていたらしく、耳は慣れたものとして受け流している。

今気付いた。それは昔、太古の昔、聞いていた音だったのだ。


あまりに日常に溶け込みすぎて忘れていた。

それを初めて聞いた日、世界は終わって、一人の赤子が生まれ落ちた。



雨の音にそれは変わった。

暗い闇の中でそれを聞いている。

雑踏を音楽として心臓がリズムをとっているかのよう。


千歳は、教室の自分の机で、腕の中に顔を埋めている。


朝の気だるい休み時間が終わって、早く授業が始まらないかと待ちかねていた。

こんな無駄な時間はいらないのだ。

学校はただ、勉強を反復運動のように繰り返す場所であればいい。

こんな時間は、必要ないのだ。


こんなに孤独を感じる時間は。

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