第30話
人形劇クラブは、この街に人形劇の祭典、フェスティバルができてから、この小学校に作られたクラブだ。
街を挙げての祭典に、子供達も作り手として参加できるようにと作られた。
この小学校でも、毎年夏休み中に、体育館で、部員がストーリー以外、できる限りすべてを手掛けた人形劇が上演される。
今はその準備期間だ。
「和菜ちゃんは何を演じるの」
「うーん、本当は、クラブの人以外秘密だっていいたいけど、教えてあげるね。わたしは、人魚姫のお姉さんと魔法使い役。今、その人形を作っているところ」
「ふーん」
「千歳ちゃんはどうしてここにいるの」
和菜のその言葉で、千歳は黙った。
答えられるはずもない。
あの子の前で、魔女狩りに遭いながらも気丈に振る舞っているあの子の前で、同じ状況の自分が、自分だけかっこ悪く逃げてきただなんて。
和菜は逃げたりしなかった。
四角い箱の中に、ウジ虫の中に放り込まれようと毅然と立っていたその子だった。
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