第80話

時季ではないが、桜吹雪を彷彿とさせる。


庭に舞い落ちる紙吹雪を眺めながら、何も考えられなくなっていた。


風花が頭を過る。



こんな腐った箱庭から誰か、わたしを連れ出してください

こんな場所じゃないのでしょう。わたしの居場所はこんな寂しい場所じゃない



そうだ。

いっそ、ここから飛び降りればいい。そうすれば、ここから飛び立つことができるだろう。でも、そんな勇気、自分は持ち合わせていない。


教室の廊下側のドアが開く。先生だった。

その姿を見たクラスのみんなは、いっせいに席に着く。まるで、何事もなかったかのように。


先生は、席が一つ空いているのを見ると辺りを見渡した。

そして、日の差し込む窓側に目をやると透明なガラス窓の外に、手すりの向こうを見つめる千歳の姿があった。

「千歳さん」

先生は、ベランダ側のドアに駆け寄り、そこを開け放つ。

「どうしたの。どうしてここにいるの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る