第78話
舞台の上で、かかっていた紅色の暗幕が開きました。
物語は始まったばかり。だけどそこに生きている人間は一人もいません。
感情のない人形が道化を演じているだけです。
物語は途中ですが、暗幕を閉じましょう。心を閉ざしましょう。
まただった。千歳は、誰ともなく肩を押され、ベランダ側の窓へ誘導された。
これで追い出されるのは二度目。
あの雨の日、母親に肩をたたかれ家の外へ追い出された。これで二度目だ。舞台の上から抹消されるのは。
教室の外へと千歳の体が出たところで、透明な窓が閉められ、鍵がかけられた。
きっと、また少し経てば、何事もなかったかのように千歳を受け入れた演技であちら側に迎え入れるだろう。
再び排除するべき物体として、また同じことを繰り返すために。
「あ、いけないんだ。千歳ちゃん。ガラスに素手で触っちゃいけないんだよ。指紋が付くから」
誰かが、こちらに指をさし言った。
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