第51話
この場所には誰もいない。
誰も迎えになんて来てくれない。
行こうと思っても、こんなんじゃ行けるはずもない。
無力だ。
自分は、パジャマ姿で、バスに乗ろうと思っても財布がなくて、バスも、時刻表を見れば、もう、何時間も向こうにならなければ来ない。
なんてちっぽけで滑稽でみじめなのだろう。
それで、よかったのだ。
雨の日は誰も出歩かない。誰の目にもさらされることがないのだ。
こんな自分は、誰も知らないまま終わるのだ。
とぼとぼと家への道のりを行く。
こんな日は、雪が降ればいいのに。
雪は、舞い降りて、地面に積もって、この寂しい世界を埋め尽くしてくれるはずだから。
手が凍えそうでも、足が冷たさで棒のようになっていても、降るなら雪がいい。
このことだったのだ。
本当のお母さんが、言っていた。
雪が降れば、誰もいない街を、世界を、埋め尽くしてくれる。
とっておきの世界に変えてくれるって。
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