第5話 読み取れるか?
大量のリザードマンを倒し終えたアストたちは依頼金、素材を売って大儲けした金でいつもより豪華な夕食を食べた後、あまり通行人がいない場所に移動し……アストは亜空間から屋台……ミーティアを取り出した。
「っ! す、すげぇな……これが、アストの城ってやつか」
「そんなところだ。今日は祝勝会だから、フランクに対応させてもらうぞ」
三人はまず、アストにお任せで一杯頼みたいと注文していた為、アストは三人の好み……アルコールに対してどれぐらいの体勢があるかなどを尋ね、即座に三種それぞれ別のカクテルを作り、提供。
そしてまだ三人の腹には余裕があるということで、ピザの準備を始めた。
「ッ……注文通り、強くて刺激的な酒、いや、カクテルだぜ」
「私のも注文通りで、ちゃんとアルコールが感じられるのに、甘くて呑みやすい!!」
「俺のカクテルも……俺好みの渋さと強さだ」
「ふふ、そう言ってくれると俺としては嬉しいよ」
職人としての嬉しさを浮かべながら、既に報酬として多めにお金を貰っていることもあり、ピザが出来上がるまでのつまみとして、丁度良い温度で保存していたクラッシュバッファーというCランクモンスターのローストビーフを提供。
「美味い!!! 普段食ってる肉料理もうめぇんだけど……はは、アストが昼は冒険者として活動しながらも、夜はバーテンダーとして働きたいって気持ち……熱? が解る味だよ」
「最高の褒め言葉だな」
さて、そろそろ三人のグラスが空になる。
またお好みを尋ねて自身のセンスで注文するか、それともメニューを見てもらって決めてもらおうか……どうしようかと思っていると、一人の騎士がアストたちの方にやって来た。
ただの通行人……という訳ではなく、ハッキリとアストの屋台に向かって歩を進めてくる。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
「…………」
アストは即座に亜空間から椅子とテーブルを取り出し、騎士は軽く頭を下げて言われた通り腰を下ろし……テーブルの上に置かれたメニュー表を手に取る。
「…………」
(この人、どっかで見たことあるな…………この街の領主に仕えてる騎士の人、だよな)
「あっ、誰かと思ったらハルドさんじゃないですか~~~。こっちに来て一緒に呑み
ましょうよ~~~」
(あれ……まだ、酔っていないよな?)
リーダーの男性からは酒が強い方だと聞いていたため、アストは三杯目……四杯目までカクテルの味が楽しめるよう、一杯目のカクテルはそれなりにアルコール度数はあるものの、強い人にとってはジャブみたいなカクテルであった。
「…………失礼する」
悪い気はしなかったのか、ハルド……ハルド・ノルティードは椅子を移動し、屋台の方へ移動。
(知り合い、なら構わないか)
不必要になったテーブルを速攻で回収。
アストは祝勝会の席に入って来た人物……しかも騎士に対してどう対応すれば良いかと悩んでいると、メニュー表から視線を外したハルドは再びアストに向かって軽く頭を下げた。
「話は、聞いている。君が主力となり、リザードマンを倒してくれたと」
「えぇ、彼らと共に」
アストたちが受けていた依頼の内容通り……Cランクモンスター、リザードマンが六体ほど固まって行動しているのであれば、そこまで大きな問題ではない。
危険と言えば危険ではあるが、それなりに優れた冒険者や騎士を派遣すれば、直ぐにその脅威を消し去ることが出来る。
だが、そんなリザードマンが三十体弱……加えてそれらのリザードマンを統率する上位種、リザードマンリーダーが固まって行動しているとなれば、それなりに優秀な戦闘者たちを集めて討伐に向かったとしても、死者が出る可能性がある戦いに発展してしまう。
これまでそれらしい被害が出ていなかった、だから騎士団やギルドもその脅威を把握出来ていなかった……それは確かに仕方ない。
しかし、だからといって被害を受けた者たちにとっては、仕方ないで済まされることではない。
それをハルド・ノルティードは……良く理解している。
「そうか………………すまない、君のお勧めの一杯を、頼んでも良いか」
「かしこまりました」
なんて事はない、手慣れた様子で君のお勧めの一杯という注文を引き受けたアスト。
そんな彼の姿を見て、先日……そして今日、共に行動した三人は見たことがない一面に、様々な思いを受けた。
(おいおいおい~~~、俺らとそんなに歳変わらねぇよな? なのに……なんかヤバくね?)
語彙力が死んだリーダー。
(そういえば、アストって女性の冒険者……後受付嬢にモテるってちらほら聞くけど、この魅力に射貫かれた感じ?)
同性が堕ちる理由を何となく察した斥候の女性。
(…………同性が、大人が憧れるカッコ良さ、というものか)
いつかは自分もと思わせるアストに、敬意を持ったタンクの男。
(お勧めの一杯…………試されてるのか、それとも信頼されてるかの二択なんだよな~~~~~……楽しみであると同時に、苦手な注文内容でもあるんだよな~~~)
当の本人はハルドからの注文内容に対して、顔に出さないように悩んで悩み……チラッと注文した本人の表情を雰囲気を見て、これにしようという一杯が決まった。
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