第113話 連れ込まれた側だからセーフ?
「…………ん???」
睡眠から目が覚めたアスト。
良く寝た……そう思うと同時に、ほんの少し頭に痛みを感じた。
(そうだな。昨日は奢りだからと言われてよく呑んだ……違う、そうじゃない)
目を覚ましたアストの眼に入った光景は……ここ最近自分が泊っている宿の部屋と違っていた。
「っ……………………はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~…………いつぶりだ?」
小さな寝息、存在感を感じ、そっと隣に目を向けると……そこには素っ裸で寝ているナツキの姿があった。
因みに、しっかりとアストも素っ裸である。
「ん、ふわぁ~~~~~……あっ、おはよう、アスト君」
徐々に先日の夜について記憶が蘇ってきていた途中で、ナツキが目を覚ました。
すると、アストは直ぐにベッドから飛び降り、綺麗な土下座をかました。
「本当に、申し訳ございませんでした」
「……あっはっは!!!!! 朝から笑わせないでよ~~!!」
あまりにも綺麗な土・下・座、を見てアキラは毛布がはだけ……胸がもろ見えな状態でも一切恥ずかしがることなく笑った。
「別にアスト君が気にすることなんてないよ。だって、連れ込んだのは私の方なんだしさ」
「そ、それは……えっと…………」
まだ昨夜の記憶が完全回復はしておらず、細かい部分までは思い出せない。
「本当だから安心して大丈夫だよ。いや~~、それにしても楽しかったわね。こう……久しぶりにはっちゃけた気がする」
「…………っ」
細かい部分までは思い出せないものの、はっちゃけていた記憶はある程度復活してきたこともあり……なおさら土下座状態から頭を上げられなかった。
「大丈夫だから、とりあえず起きてベッドに座りなさいって」
「っ……わ、分かりました」
「いやぁ~~~、にしてもあれだね。もしかして結構溜まってた? ヴァレアから聞いてたよりかなり激しかったよ」
「そう、ですね……王都に戻って来てから、なんだかんだ発散してなかったので」
冒険者としてギルドの依頼を受け、夕食を食べ終えた後はミーティアを開き、来客にカクテルや料理を作る。
そういった日々を繰り返しており……冒険者としてスタミナはある部類だが、疲れは溜まるため、宿に戻れば着替えて直ぐに寝てしまうことは珍しくない。
そのため、ここ最近はムラムラを発散する前に寝てしまっており、ナツキの言う様にそこそこムラムラが溜まっていた。
「確か、冒険者をしながら自分でバーを持ってるんだもんね。そりゃ疲れも溜まって娼館まで行く気力は無くなっちゃうか~~……だからこそ、そんな中で君とやれたのはラッキーだったと言えるかもね」
(…………この人の事、まだ全然詳しく知らないが、別大陸の人っぽいけど、もしかしてそこにアマゾネスの血でも混ざってるのか?)
アマゾネスの血が入っていなくとも、女性冒険者の中には、一定数性に奔放な者がいる。
しかし……ナツキはクラン、ノヴァの幹部。
その立場だけを考えると、後輩たちの模範とならない行動は取れない……と考えていたアスト。
「別に俺とやれるのがラッキーではないと思いますが……」
「それはアスト君がしっかり自分の価値を理解してないからだね。誰にでも言ってる訳ではないみたいだけど、上の人たちの間だと、君は偶に話の話題に上がってくるんだよ」
「…………初耳なんですが」
冒険者として活動を始め、既に三年が経過。
冒険者活動を始める前に爆速スタートダッシュを決めていた為、活動を始めた初期の段階から先輩冒険者と関わる機会があった。
そんな中でも、トップクラスの実力を持つ冒険者たちと関わった経験もある。
「ちゃんと話す相手は選んでるみたいだからね。あっ、別にあれだからね。バーでも
言った通り、勧誘出来るとは思ってないから」
「……失礼なのは解ってますが、そう言ってもらえるとホッとします」
クラン、ノヴァから勧誘を受けることは、王都で活動している冒険者であれば非常に名誉という認識。
アストも同業者たちのその認識は解っているものの、今回の一件の責任を取れ……といった形で勧誘されては……非常に困る。
まだ先の話と考えていたが、国外に出る可能性もあった。
「ふっふっふ。本当にらしいね。そういえば、私ともやったんだし、今度……師弟丼? ってやつやってみる?」
「ぶっ!!!!????」
どの世界にも変態はおり、常人が思い付かない造語を作り出してしまう。
「あ、ナツキさん。冗談は、その辺りで」
「アスト君が相手なら、ヴァレアも許してくれると思うけどな~~~」
「…………本当に、ご勘弁を」
「あっはっは!!!! ごめんごめん。ちょっと虐めすぎちゃったね」
なんとか、一夜を共にしてしまったからといって、責任を取る必要はないと相手側が言ってくれた。
だが……師弟丼までいってしまうと、それはさすがにアウト過ぎる。
取り返しのつかない事態に発展すると、アストの本能が告げていた。
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