第14話 冒険者として活動する
「よし、もう気が済んだだろ」
男女数人、アストの存在が気に入らなかったDランク冒険者たちが転がっていた。
「歳がお前らと同じぐらいで、Cランクってのは…………おかしくはないけど、珍しくはある。それは間違っちゃいない。そういった存在を同性代が妬む。これも自然な流れ……構図だ」
「っ!!!!」
お前らの嫉妬や妬みなど、妬みなど気にする価値もない。
そう言われている様に感じ、現在転がっている若造たちの顔が歪む。
少し嫌な言い方だったかもしれないが、こういった体験を今まで何度も体験したことがあるアストにとってはそう言いたくなるのも無理はない。
「俺はそれを解っている。仕方ないと思っている。だからこうして挑戦自体は受けるようにしているが、夜の街中……もしくは街の外で襲い掛かってくるなら、その時は容赦しない。俺は仏や神ほど優しくはないからな」
三度どころか、基本的に二度も許すつもりはない。
「……っ!!!!! なんで、なんでお前はそんな強ぇんだよ!!!!!!」
地面を思いっきり殴りつけ、理不尽と感じた事実を叫ぶ。
平民出身だと聞いていた。
冒険者としての経歴は約三年。
調べた……というにはちょっと情報不足が過ぎる。
しかし、その内容自体は間違っていない。
アストは平民出身……付け加えるのであれば、村出身の平民。
貴族の隠し子などではない。
冒険者として活動を始めてから三年目。
これも間違ってはいない。
条件は殆ど変わらないと思っていたのに、彼らはコテンパンでクソボロ雑巾と言っていい程、なにも出来ずに負けた。
木刀でビシバシとシバかれ、うち一人は潰れない程度の金的を蹴り上げられた。
「流れに違いはあれど、これまで何度も聞いてきたセリフだな…………あれだ、俺はこの世に生まれた時から頑張っていたからだな」
「…………嘗めてん、のか」
(うん、さすがに適当に答え過ぎたな)
全く間違ってはいないのだが、そもそもアストは自身が転生者であることを全くオープンにしてない。
「そうだな。言い方が悪かった……俺はこの道を目指すのが早かった。非常に早かったんだよ…………バーテンダーを目指すと決めたのがな」
「っ、やっぱ嘗めてんだろ!!!!!」
(……ツッコミはなしで直ぐキレるか)
嘗めてる、というよりこういった輩に絡まれたり好き勝手に言われたりするのは、ストレスであることには変わりないので、ちょっとおちょくりたくなった。
「おいおいおい、事実だぞ? 俺は昼は冒険者、夜バーテンダーの二足の草鞋で………って言っても解らないか。とりあえず冒険者をしながら屋台のバーテンダーとして活動してるんだ。んで、バーテンダーになろうとしたのが先だったんだ」
「…………」
どこかでチラッとその情報に関して耳にしたことはあるため、再度怒鳴りはせず、ひとまずゆっくりと地面から起き上がる。
「本当に早かった。色々考えた末、それなら冒険者として活動しながらバーテンダーとして活動しようとしたのも早かった」
「目指すのが早かったから、俺らより強ぇってか」
「俺の村には元騎士の人が住人がいてな。自警団のリーダーも務めていたから、色々と教わってたんだ」
その元騎士は平民出身の騎士であったので、冒険者との交流も深く、まだケツに殻がついているルーキーよりも知識を持っていた。
この世界にインターネット、漫画、ゲームなどの娯楽はない。
ぶっちゃけた話……アストのスキルを使用すれば、娯楽と呼べる娯楽が少ないこの世界でも堕落することは出来てしまうのだが、そんな未来には一ミリも興味がなく……興味が惹かれるものが多かった。
そしてアストだけの特別なスキルのお陰で、大して時間を掛けずに独立してバーテンダーとして活動を始められた。
「それなら、俺だって」
「そうなのか? それじゃあ、意識の問題だな」
「俺が……本気でやってなかったて、言うのか!!!!!!」
俺の事を何も知らないくせに!!!! と叫びたい心が表情に現れている若造。
だが、転生者という存在そのものがチートに分類されるアストからすれば、その意識に対して果てしない差があるのは間違いないと断言出来る。
「俺は本気で体を動かして本気で考えて、解らないことがあれば元騎士の先生に尋ねてを何度も何度も繰り返した。十五歳になったら絶対に冒険者として活動するって目標を抱いてな。ここで重要なのが冒険者になって有名になる、もしくは偶に詩で聞くような英雄になるという目標を持ってではない」
そういう目標を大なり小なり持っていた若造たちは、再び怒りや恥ずかしさで顔が赤くなるも、既に力の差はその身に刻まれていた。
「冒険者として活動する……お前たちも、それがどれだけ難しいことか解るだろ」
「っ……あぁ、そうだな」
夢を見るのは人の勝手。
それでも現実が若造の為に優しくなることは絶対にない。
「もう一度言うぞ。俺は十五になったら絶対に冒険者として活動すると決め、毎日畑仕事の合間に鍛錬を行い続けてきた」
ベテラン達が一目置く存在であるアストを挑発して喧嘩を売ってしまうほどおバカではあるが、脳みそがスカスカなクソ馬鹿ではなかった。
ただ……それと納得出来るか否かは別問題だった。
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