第24話 消化? 吸収?

「ったく……嫌な奴に出会ったな。つーか、なんでこんなとこ、に!!!」


「ッ!!!!」


Dランクモンスターの討伐依頼を受け、昼間の仕事を行っていたアスト。


新しい街の周辺に現れるモンスターの強さなどは既に頭に入っており、ソロで活動しても問題無いと思って行動していた。


実際にアストが考えた通り、例え十数体のDランクモンスターが一度に襲い掛かっても、アストであれば対処出来る。


しかし…………周辺に鉱山などもない場所でCランクのモンスター、シルバーゴーレムと遭遇するのは、想定外であった。


その体は当然アストよりも高く、三メートルに届く高さ。

そして腕、脚と共にアストの胴体よりも太い。


振るわれ剛腕は、並みの盾であれば容易に凹ませる……最悪、そのまま貫いて使用者を粉砕する。


(戦れることに戦れるが、面倒な相手だな)


パワーが他のCランクモンスターと比べて頭一つ抜けてる代わりに、機動力は並以下。

パワーと同等レベルの防御力も持つが……アストは攻撃魔法が使用出来るため、超絶相性が悪い相手という訳でもない。


「ッ!!!!!!」


「っ!!! っと。本当にゴーレム系のモンスターは攻撃力が高いな、クソが」


ゴブリンやオーク、ウェアウルフやリザードマンなどとは違い、痛覚がないタイプのモンスター。

そのため、被弾覚悟でカウンターを行ったとしても、無意味に終わる可能性が高い。


倒す為に四肢を切断する。

もしくはモンスターの第二の命である紫色の結晶、魔石を取り除くか壊す。


(このシルバーゴーレム……戦い慣れてるのか? ちょっと戦り辛いな)


これまで何度かシルバーゴーレムとの戦闘経験はあるため、ソロでも倒せる自信はあるが……ソロだからこそ、慎重に戦わなければならない。


(ランス、スラッシュ系の攻撃でスパッと切断……貫通出来れば早いんだが……ちょっと、上手く弾き過ぎじゃないか)


刃を持つ得物とはあまり相性が良くない。

それでも遠距離攻撃一辺倒では動きが読まれやすくなってしまうため、ところどころで接近して斬撃を叩き込んでいるが……さすがに一度では切断できない。


(長く生きた個体は知恵を付けるが、まさかゴーレムが? 俺のスキルみたいな色々とぶっ飛んだ存在がある以上、あり得ないとは言えないが……だとすると、ここで仕留めておかないとだな……くそ。一人で依頼を受けるんじゃなかったな)


この場でアストがシルバーゴーレムを振り切って街に帰ったとしても、殆どの者はアストを責めることはなく、生きて情報を持ち帰ったことを褒める。


ただ……その間に、厄介なシルバーゴーレムが生息している事を知らない同業者たちが死ぬかもしれない。


(魔力が底を尽きる前に、やってしまおう)


そもそも既に討伐依頼を終えているとはいえ、街に戻るまでそれなりの距離がある。

安全に街まで変える為に……万が一の襲撃にも耐えられるよう、これ以上時間を掛けるわけにはいかない。


「なっ!!!!????」


腹を決めた瞬間、シルバーゴーレムから予想外の攻撃が放たれた。


それはゴーレムらしくロケットパンチ……ではなく、両腕に生み出された鱗のマシンガン。


(はぁ、はぁ、はぁ……あ、あっぶなっ!!!! なんだ今の……う、鱗? 鱗を飛ばしたのか!!!???)


訳が解らない。

本当に訳が解らないが、飛んでくる前に見えた腕の変化。

そして後方にあった木々にいくつも突き刺さっている物を見る限り、銀の鱗である事に間違いはない。


(ロケットパンチはまだ解る。実際に見た時は驚いたけど、まだ解る……鱗を飛ばすって、なんだよそれ???)


訳が解らないと思いながら体は動かし続け、頭をフル回転し続ける。


(ゴーレムに鱗とか、全く関係無い要素、だ、ろ………………そういえば、いつか、聞いたことがる、ような………………チッ! クソが、本当にソロで動くんじゃなかった)


アストは以前、学者気質な先輩冒険者から聞いた話を思い出した。


ゴーレムは基本的に生物を食べることはない。

しかし……本当に極稀に土や鉱物などではなく、生物を食べる個体がいると。


(……ゴーレムって、体なの中、殆ど金属だろ……マジで、どうやって消化して、吸収してるん、だよ!!!!)


鱗を発射していることから、シルバーゴーレムの強さを考えるにリザードマン、四つ脚歩行の幼竜と呼ばれている同じくCランクのリザード。

そして大蛇系のモンスター……この三種類が候補としてあげられる。


(こいつが何を食ったとしても、銀の鱗のマシンガンは、マジで、ヤバい!!!)


頑張れば耐えられる?

マジックアイテムの力を借りれば耐えられそうだと思ったが……基本的に痛いのは嫌。


ダメージを受けて生きているのだと実感し、笑みを零す一部の例外とは違う。


アストは安全に……そして速攻で倒す為に、詠唱を始めた。

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