第133話 復讐者が、二体

「団長、あれは……いったい」


「……見覚えが、あるな」


運良く、アストたちは二日目にして例のオーガたちと遭遇。

しかし……例のオーガは、アストが想定していた最悪の成長をしていた。


だが、例のオーガの横には、一体のドラゴンが並んでいた。

アストは全くそのドラゴンについて知らなかったが、団長であるアリステアは見覚えがあった。


「あの、土竜? は……先代団長が致命傷を負わせた筈の土竜……だった筈だ」


「土竜?」


アストは思わず疑問の声を零してしまった。


確かに鱗の形や色合いなどを見れば、土竜に見えなくもない。

だが……例のオーガと共にいる土竜は、一目では土竜と気付かないほどスリムな体型をしていた。


「「……オォォオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」」


「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」


アリステアとしても、アストとしても、もう少し観察する時間が欲しかったが、それはあくまでアストたちの事情。


例のオーガ……Aランクへと成長した戦凶鬼と、アリステアの記憶通り先代団長の手によって致命傷を負った筈の土竜……は成長し、Aランクの希少種、リブルアーランドドラゴンへと進化していた。


「例のオーガは私が戦る!!! 土竜の方は任せたぞ!!!!」


「「「「「「了解!!!」」」」」」


Aランクモンスター二体の咆哮を受けてもなお、アリステアは怯むことなく指示を飛ばした。


そして団長の強さを知っている団員たちはアリステアを信じ、土竜? と思えなくもないドラゴンの対応を開始。


(この感じ……間違いなく、Aランクだな)


抜剣したロングソードに旋風を纏い、風斬波を放ちながら、アストは改めて冷静に目の前のドラゴンに関して観察し始めた。


以前、アストは主戦力としてではないものの、Aランクモンスターとの戦闘に参加したことがある。

その時感じた威圧感などを思い出し……目の前のドラゴンが、かつて対峙したモンスターと同等の力を有していると判断。


(惜しんでられないな)


アストはアイテムバッグから腕輪と指輪と取り出し、即座に装着。


そして一つのポーションを取り出し、一気飲み。


「ッ、シャァアアアアアッ!!!!」


追加で装備したマジックアイテムのお陰で、飛躍的にスピードがアップ。


そして時間制限付きではあるが、一時的に身体能力が向上するポーションを飲んだことで、更に戦闘力を増加。


「ヌっ、オラッ!!!!!!」


「ッ!?」


いつかの為にと、全く使っていなかった雷の攻撃魔法が内蔵されている戦斧を振るい、ほんの少しだけリブルアーランドドラゴンの動きを止め、その隙にまだ残っている強化ポーションを複数の騎士に投げた。


「使ってください!!」


いきなり渡されたポーションに対し……彼女たちは一切躊躇なくすることなく封を開け、一気に飲み干した。


その効果を実感した後、いったい幾らするポーションだったのかと、気になることは頭に浮かぶも、目の前の土竜? の素材でなんとかしようと即決断。


「フンッ!!!!」


「ハァアアアアアアッ!!!!」


「せやっ!!!!!!」


「ウィンドジャベリンッ!!!!!」


ある者はリブルアーランドドラゴンの攻撃を受け流し、その隙に複数の攻撃が叩き込まれる。


後衛で戦う魔法使いは……風属性以外に使用出来る属性魔法を持っているものの、森という場所に加えて、自身のパーティーメンバーが多いという面も含めて、火魔法や水魔法を容易に使用出来なかった。


それはイシュドも直ぐに理解した。

ついでに……マジックアイテムや強化ポーションを使用したお陰でスピードに関しては通用しているものの、攻撃力に関しては今一つであることに気付いてしまった。


(チッ!!! クソったれが…………仕方ない!!!!)


Aランクという強大なモンスターと対峙するのであれば、元々アストは最前線で戦う予定はなかった。


その為、折れてしまう可能性を考える必要はないと判断し、ベルダー作の風刀を取り出した。


(こいつの攻撃なら、少なくともダメージは通るだろ!!)


Aランクの風竜や雷竜には届かずとも、リブルアーランドドラゴンのスピードは、全くもって土竜とは思えない。

にもかかわらず、防御力はガッツリAランクのドラゴンに相応しいものを有している。


故に、アイテムに頼って身体能力を向上させたとしても、期待してたほどのダメージは入らず、アストは一撃の攻撃力が高い風刀を取り出し、構えた。


「ッ」


リブルアーランドドラゴンは直ぐに風刀を構えたアストの危険度を察知。


しかし、アストは直ぐに抜刀せず、構えたまま戦場を走り回った。

勿論、ただ走り回るだけではなく、なるべくリブルアーランドドラゴンの死角に移動し続ける。


Aランクのドラゴンであっても、危険性を感じさせる攻撃力を持つ者に、自身の死角に入られるのは、非常に気分がよろしくない。


「どこ、みてんだいッ!!!!!!」


「ッ! ガァアアアッ!!!!!」


だが、今回の討伐戦に参加した女性騎士たちは、元々Aランクに進化したであろうオーガであってもアリステアを主軸として戦えるメンバーたち。


非常に質の高い戦闘者たちが揃っているため、序盤は僅かにアストたちが有利な戦況となった。


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長い間投稿が空いてしまい、申し訳ありませんでした。

これから、またなるべく等間隔で投稿を始めます。

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