第14話 地竜を倒そう!

 魔導砲。

 それはテオドルフが新しく考案した、次世代の魔法兵器だ。


 魔力を動力として動く魔導砲は、普通の大砲の数十倍の威力を誇る。

 普通の砲弾を使用することもできるが、魔石を利用した特殊な砲弾を使うことでその威力は格段に上がる。

 その威力はテオドルフが作成した城壁を一発で粉砕するほど。並のモンスターでは消し飛んでしまうほどの破壊力を秘めている。


 金属を大量に使うこと、大きめの魔石が必要になるという素材的問題からまだ四門しか作れていないが、それでも魔導砲は村の防衛力をかなり引き上げることに成功していた。


「地竜、射程圏内に入りました!」

「発射っ!」


 テオドルフの号令で、四門の魔導砲から一斉に砲弾が発射される。

 ドン! という爆音とともに、砲弾は宙を飛んでいく。

 そして群れの先頭を走る地竜の足元に衝突した砲弾は、大きな爆発を起こし、地竜たちを吹き飛ばしてしまう。


「な、なんという威力だ……」


 初めて魔導砲の威力を見たローランは唖然とする。

 魔力を動力とした兵器は他にも存在するが、これほどの威力と精度を持つ物をローランは他に知らなかった。


(砲手がこの前まで普通の村人だったいう点が特に恐ろしいですね……。これなら兵士の練度が低くても十分カバーできます)


 考えるローランの視線の先で砲弾が装填される。

 特殊な砲弾は重いため、人が装填するのは難しい。しかしその作業は兵士ゴーレムが補助サポートしてくれるので問題ない。

 砲手は狙いを定めて撃つことに集中できるようになっていた。


「次弾装填完了しました、撃ちます!」

「はい! お願いします!」


 魔導砲が火を吹き、次々と地竜が倒れていく。

 なかなか砲弾が直撃することはなかったが、地面で爆発した時の衝撃で地竜は吹き飛んでおり、それでダウンしていた。頑丈な鱗を持つロックホーンが衝撃だけで戦闘不能になるほど、魔導砲の威力は凄まじかったのだ。


 しかしそんな中でも運良く砲撃をかいくぐっていた個体がいた。


「テオドルフ様! 地竜の二体が城壁に接近しています!」

「分かりました。二人を前に出してください」


 テオドルフの指示通り、二人の影が地竜たちの前に出る。

 巨漢のゴーレム、ゴームとガルムの二人だ。


「ゴーッ!!」

「ガウッ!!」


 ゴームは硬い拳同士をぶつけ合い、ガルムは生前使用していた巨大なナタを振り回す。

 二人ともやる気マックスのようだ。


『ガアアアアッ!!』


 そんなゴーレム二人のもとに、二体の地竜が突っ込んでくる。

 地竜ロックホーンの体長は九メートル程度。これはトリケラトプスと同程度の大きさとなる。


 もちろん二人のゴーレムよりも大きいが、ゴーレムたちは正面から地竜を迎え撃つ。


「ゴーーーーッ!」


 まずゴームが地竜の突進を正面から受け止める。角を脇で抱えて、頭部をガシッとつかんでいる。

 ぶつかった衝撃でずりずりと後退したが、足に力を入れて完全に受け止める。そして腕に思い切り力を入れ、なんとそのまま持ち上げてしまう・・・・・・・・


「わ! 持っちゃった!」

「ありえない……」


 驚くアンと、頭を抱えるローラン。

 ゴーレムが人よりずっと力が強いことは知っていたが、この大きさの地竜を持ち上げてしまうなど、直接見なければ信じられなかったであろう。


 そしてゴームは持ち上げた地竜をそのまま地面に叩きつける。その動きはプロレス技のパワーボムによく似ていた。

 ゴン!! という重い音ともに地面に全身を打ち付けた地竜は『ガ……ッ!?』と苦しげな声を上げ、地面に倒れる。


 一方ガルムはというと、手にしたナタを正面から振り下ろし、ロックホーンの象徴とも言えるその大きな角を叩き折っていた。

 そして更に今度は頭部へそのナタを振り下ろし、仕留める。


「ガアアアッ!!」


 勝利の咆哮を上げるガルム。

 ゴーレムの怪力とゴブリンキングの戦闘能力を併せ持つガルムにとって、地竜はたいした相手ではなかった。

 二人の勇姿を城壁の上から見ていたテオドルフは「よし」とガッツポーズをする。


 他の地竜たちは既に魔導砲の攻撃で戦闘不能になっている。

 領地防衛は成功したのだ。


「みなさんのおかげで地竜の撃退に成功しました! ご苦労様です!」


 テオドルフが兵士たちに労いの言葉をかけると、兵士たちは歓喜の雄叫びを上げる。

 今まで逃げる生活を続けていた彼らにとって、モンスターに勝利することは特別な意味を持つ。その喜びから涙する者まで現れる。


 しかしみなの緊張が緩む中、兵士の一人が双眼鏡を手にしながら驚いたように声を出す。


「な、なにかが地竜が来た方向より飛んできます! こ、この姿は……飛竜です!」

「なんですって!?」


 報告を聞いたテオドルフも双眼鏡を手にして確認する。

 すると確かにこちらに向かって赤い鱗をした竜が複数こちらに飛んでくるではないか。

 まだ戦いは終わっていなかった。

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