第9話 黄金竜を持って帰ろう!
「でやああああッ!!」
咆哮と共に大剣が振り下ろされ、黄金竜の肉体にぶつかる。
黄金竜の体はとても硬いが、ガーランの怪力はそれをものともしなかった。一撃、また一撃と振るわれる超重量級の攻撃を食らった黄金竜は落とし穴から抜け出すこともできずに倒される。
何度か反撃しようとはいていたけど、レイラの神速の剣技がそれを制していた。二人は久しぶりに会ったはずなのに連携はバッチリだ。
一流の剣士同士、通じ合うものがあるんだろうね。僕もこっちに来てから鍛えているけどあのレベルには到底及ばない。
「がははっ! このような大物を討ち取れるとは騎士の
「終わりましたテオ様。運搬の準備を始めてもよろしいでしょうか?」
ガーランもレイラも仕事を終えた後なのに疲れを微塵も感じさせない。
少し休憩してから運ぼうと思ってたけど、これならすぐに始めても良さそうだね。
「うん。ありがとう二人とも。それじゃあさっそくだけど運ぼうか」
「かしこまりました」
「力仕事なら任せてください殿下。一人でも運んでみせますぞ!」
二人はさっそく黄金竜の体を荷車に載せ始める。
「……まさか怪我人なしであの黄金竜を討伐してしまうなんて。きっとこの話を誰に言っても信じないだろうね」
黄金竜を積んでいる様子を眺めていると、兄さんが隣に来て話しかけてくる。
「ありがとうテオドルフ。これできっと協力を取り付けることができるはずだ。この恩は忘れない」
兄さんは僕の手を両手で握ると、真剣な表情でお礼を言ってくる。
こんな風に兄さんからお礼を言われたことはないので、なんだかむず痒くなってしまう。
「そんな。僕はたいしたことしてませんよ」
「いや。テオドルフの助けがなかったら黄金竜を見つけることにも苦労していただろう。本当にありがとう。この恩に報いるためにも、必ずや父上から王座を奪ってみせよう」
「……はい。また力になれることがあったら言ってくださいね。僕でできることならなんでも手伝いますから」
「ふふ、心強いな。それじゃあまたなにかあったら頼らせてもらうとしよう」
兄さんはそう言って笑みを浮かべる。
きっと兄さんなら今の父上よりも上手く国を治めることができるはずだ。ニルスが継ぐなんてもってのほかだ。
いつか来るその時にはたくさんの力が必要になるはず。
死の大地の開拓と並行して戦力の増強ももっと力を入れておいた方が良さそうだね。
よし、これからもっと頑張らないと!
◇ ◇ ◇
黄金竜を倒した日の夜。
テオドルフたちの住むルカ村では盛大に宴が開かれていた。
「それでは不肖ガーラン、歌わせていただく!」
ガーランがそう叫ぶと、村の人たちは「いいぞいいぞ!」とはやし立てる。
まだ村に来て日の浅い彼だが、もうすっかり村人と打ち解け仲良くなっていた。
ガーランにとってテオドルフは主君であり、そんな彼を慕う村人は無条件で仲間である。村人たちもテオドルフに忠義を尽くすガーランの姿を見て、彼が自分たちと同じなのだとすぐに察したのだ。
「殿下ァ! 楽しまれてますか!」
歌い終わったガーランは、騒ぎから少し離れたところにいるテオドルフのもとに行く。
顔を真っ赤にしてすっかり出来上がってるガーランを見て、テオドルフは「大丈夫?」と不安そうにする。
「飲み過ぎなんじゃないのガーラン」
「いやあ宴が楽しくてつい! それにこの葡萄酒が美味いのがいけないのです。こんな美味い酒は王都でもそうは飲めませぬ。いやあ甘美甘美」
ガーランはまるで水を飲むかのように杯の葡萄酒をガバガバと飲む。
テオドルフは心配そうにしながらも、それを美味しそうに飲んでるのを見て嬉しそうにする。
「気に入ってくれて嬉しいよ。それはこの村で採れたブドウで作ったお酒なんだ」
「なんとそうでしたか! この村は酒豪にも優しいのですな。この酒でしたらドワーフも気にいるでしょう」
「ドワーフって炭鉱に住む背が小さくて力持ちの人たちだよね?」
「はい。石や金属を扱わせたら右に出る者はいない、優れた者たちです。前にドワーフの戦士と戦ったことがありますが、あの斧使いは見事なものでした。彼らは無類の酒好きですので、きっとこれを気に入りますよ」
「そっかあ。まだこのお酒は改良途中だから、上手くできたら売り込みにいってもいいもね。仲良くなれたら嬉しいなあ」
テオドルフは頭の中でドワーフと仲良くなる方法を考え始める。
それを見たガーランは嬉しそうに笑うと、ゆっくりそこを離れる。
「……本当に大きくなられた。支えるつもりで来たが、出番はないかもしれぬな」
そう独り言をいいながら歩いていると、ガーランは料理を運んでいる女性とぶつかってしまう。
「きゃ!」
「おっとすまない! 大丈夫か?」
ぶつかった女性はよろけるが、上手く体勢を立て直し転ぶのを回避する。
彼女の顔を見たガーランは「む、お主は……」とその名前を思い出す。
「確かアイシャ殿と言ったな。申し訳ない、怪我はないか?」
「あ、はい! 大丈夫です! 私の方こそすみません。不注意でした」
メイド服を着て給仕をしていたアイシャはペコリと頭を下げ謝る。
村人の代表でもある彼女は料理の準備などをする立場ではないのだが、メイドスキル向上のため、進んで働いていた。
ガーランは彼女の運ぶ料理を見て、運んでいるのがテオドルフの好物が多いことに気がつき、ある助言をする。
「それは殿下に運んでおられるのか? なら今がチャンスだ。レイラ殿もいないし、今なら二人きりになれるぞ」
「え、えぇ!? そ、そんな。私は別にそんな……」
「おや、違ったのか? 村人たちから殿下とアイシャ殿はもう深い仲でくっつくのは時間の問題だと聞いていたが」
「な……っ!? だ、誰がそんなことを言ったんですか!?」
いつの間にかまかれていたとんでもない噂を聞き、アイシャは今まで出したことのない大きな声で驚くのだった。
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