第8話 黄金竜を倒そう!

 魔法のコンパスの指示に従いながらゴツゴツとした山脈沿いを進んでいく僕たち。

 するととうとう山肌に金色に輝く大きな生き物を見つける。


 ガラスと金属でクラフトした望遠鏡でそれを見た僕は、望遠鏡を兄さんに手渡して尋ねる。


「兄さん。あれが黄金竜ですか?」

「……間違いない。あの黄金の鱗と巨大な金の角、聞いた話と一致している」


 遠くであくびをしている黄金竜を見ながら、兄さんは真剣な表情を浮かべる。


「それにしてもなんて大きさだ。ロックドラゴンはもともと大型の地竜だが、それよりもずっと大きい……。大量の金を食べたことで体が異常に成長したのかもしれない。このまま戦闘するのは危険じゃないか?」


 パトリック兄さんはそう提案してくる。

 確かにあの竜は遠目から見ても大きい。尻尾まで含めると体長20メートルはありそうだ。鱗は硬そうだし、顎も大きく発達している。普通のロックドラゴンでは群れになっても太刀打ちできなさそうだ。


 だけど僕は、今のままでも十分勝てる相手だと思った。


「レイラはどう思う?」

「はい。確かにあの個体は強力そうではありますが、今の戦力でも余裕を持って討伐できるかと。少なくともこの前倒したよりは弱いはずです」

「はは……確かにあれと比べたらね」


 そう言ってレイラと笑い合ってると、兄さんが「か、亀?」と不思議そうに首を傾げる。

 そういえば兄さんにはアダマンタートルのことは話してなかったね。あの亀は小さな山くらい大きくて倒すのがとても大変だった……。あれと比べたら黄金竜も可愛く見えてくるよ。


 そのことを説明してもいいけど、いいリアクションを取ってくれる兄さんは正直面白いから、このまま放っておこう。成長した姿も見せたいしね。


「じゃあ早速準備して戦闘開始しようか。レイラ、よろしくね」

「はい。お任せください。完全なる勝利をテオ様に捧げます」


◇ ◇ ◇


 黄金竜を見つけてから10分ほどのち

 準備を終えた僕たちは黄金竜に気づかれるギリギリのラインで止まる。そして狙われていると知らない黄金竜めがけて、一斉に攻撃を始める。


「今だ、放てぇ!」


 レイラの合図でたくさんの砲弾が放たれ、黄金竜に降り注ぐ。

 それらの砲弾は黄金竜の鱗に正確に着弾し、爆発する。先の戦いから改良が施された魔導砲は、全ての砲弾に魔法効果を付与・・するようになった。そのおかげで物理防御力が高い相手であっても魔法ダメージを与えることができるようになっていた。


『ガアアアアッ!?』


 突然の攻撃に驚き咆哮を上げる黄金竜。

 その黄金の鱗は魔導砲の攻撃に耐えきれず負傷し、何枚か剥がれ落ちる。そしてその下の肉体にも無視できないダメージを与える。


「よし、この調子で攻撃を続けて!」

「はい!」


 僕の言葉にエルフの兵士たちが応える。

 彼らは四足歩行のゴーレム、グランドゴーレムの背中に装着された『魔導砲』についている。エルフの人たちは弓の名手なので視力が高くて狙撃能力が高い。

 今まで大砲は使ったことがなかったけど、教えたらすぐに覚えてくれて今では村で一番の砲撃部隊になっている。


「発射ァ!」

「おっしゃあ命中!」

「外しはしない……!」


 ……なんか性格が乱暴になっている気がするけど、気のせいだよね?

 エルフってこう、なんか静かで穏やかな性格のイメージがあったんだけど……。


 まあ彼らのおさのアンナさんは物凄い肉食系なので、みんな内にはああいう過激な面を隠し持っているのかもしれない。嫌われないように気をつけないと……。


『グウウ……ゴアアッ!!』


 黄金竜は砲弾を受けながらも、こちらを睨みつける。

 やっぱり凄い耐久力だ。あれだけ食らってもまだ動けるなんて。


『ゴアアアアッ!!』


 黄金竜はそう吠えると、こちらに向かって駆け出してくる。

 その巨体からは想像できない速さだ。走力もロックドラゴンの比じゃないみたいだ。


「おいテオドルフ! 大丈夫か!?」


 砲弾を受けながらも突っ込んでくる黄金竜を見て、兄さんは慌てる。

 僕はそんな兄さんを安心させるように言う。


「大丈夫です。ここまでは想定内・・・です」


 黄金竜は僕たちに接近すると、その大きな口を開けて噛みついてこようとする。

 だけどあと10メートルのところで、突然ズボッ! とその巨体を地面の中に落としてしまう。


『ガアッ!?』

自動製作オートクラフト、落とし穴。あらかじめ大きめのを作っておきました。これでもう動くことはできない」


 大きいモンスターは穴にハマると簡単には抜け出せない。

 こうなったらこっちのものだ。後はレイラとガーランに任せて大丈夫だね。

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