第7話 黄金竜を探そう!

「なんだこれは……!」


 少しして。

 黄金竜討伐の準備が整ったと聞いて、僕と一緒に外に出た兄さんは驚きの声を出した。

 そこにいたのは二十体ほどの大型ゴーレムと、武装した兵士十人だった。ゴーレムの背には大きな砲台が装着されていて、移動砲台と貸していた。

 これなら硬い鱗の持ち主が相手でも十分に戦えるだろうね。


「テオドルフ、なんだあのゴーレムは!? あんな形のゴーレム、見たことも聞いたこともないぞ!」

「あれは『グランドゴーレム』です。あれならすぐに黄金竜を見つけられると思います」


 黄金竜討伐のために集められたゴーレムは、一般的な二足歩行のタイプじゃなくて四足歩行で移動する『グランドゴーレム』だった。

 地竜の魔石で作られたこのゴーレムたちは、普通のゴーレムより走力に長けている。武器を持ったり複雑な動作をしたりはできないけど、移動能力ならピカイチだ。


「そんな特殊なゴーレムがこんなに……。マジでこの村、すでに国レベルの戦力があるんじゃないか……?」

「どうしましたか?」

「い、いや。なんでもない。心強いなと思っただけだ」


 兄さんはなにかを隠すようにそう言う。

 いったいどうしたんだろう……? そう思っているとレイラが側にやって来る。


「テオ様。すぐにでも出発できます」

「うん。兵士は誰を連れて行くの?」

「砲手としての適性が高いエルフを中心に組みました。魔法を使える者も数名います」


 僕の問いにレイラが答える。

 村の兵士たちは訓練してくれているけど、まだ竜と正面から戦うのは難しい。レイラとガーランも来てくれるし、今回は遠距離で戦ってもらうほうがいいだろうね。


「分かった。準備ありがとうねレイラ。それじゃあ兄さん、行きましょうか」

「え? あ、ああ! 行こうか。ところで私もあのゴーレムに乗ればいいのか?」

「馬車を引いてもらってそれに乗ろうと思っています。直接乗ることもできますけどそうしますか?」

「い、いや大丈夫だ! せっかく用意してもらったのだから馬車に乗せてもらうとしよう」


 兄さんは少し引きつった笑みでそう言う。

 うーん。ゴーレムは怖いものじゃないんだけど、見慣れてないからまだ不安なのかな? まあでも今回の移動で兄さんもゴーレムの素晴らしさを知ってくれることだろう。


◇ ◇ ◇


「なんという速さと安定感……馬の比ではないな……」


 馬車から顔を乗り出しながら、兄さんは呟く。

 グランドゴーレムの引く馬車に乗った僕たちは、猛スピードで北の大地を進んでいた。

 目指すは村の東に位置する山脈。それほど遠くないのですぐにつくと思う。


 実のところグランドゴーレムと馬の純粋な速度の差は、それほどない。

 グランドゴーレムは、馬車を引いてもその速度がほとんど落ちることはない。つまり馬力がまるで違うんだ。

 だから物を運んだりする時は、圧倒的にグランドゴーレムの方が優れているんだ。


「ところでテオドルフ。黄金竜はどうやって探すつもりだ? 山脈も広い。そう簡単には見つからないだろう」

とある物・・・・を使います。少しだけ黄金竜の鱗を貸してもらえますか?」

「ん? 構わないが……」


 兄さんは懐から金色に輝く鱗を取り出し、僕に差し出してくる。

 これは黄金竜が宝物庫を襲った時にそこに残していった物らしい。屋敷で会話をした時に兄さんがこれを持っていることを聞いていた。


「そんな物どう使うんだ?」

「ちょっと見ててくださいね、自動製作オートクラフト!」


 次元収納インベントリに収納している小型の魔石と鉄を素材として、僕は自動製作オートクラフトを発動する。

 素材が組み合わさり、新しい物が誕生するのを見て、兄さんが「おお……」と反応する。そういえば兄さんが自動製作オートクラフトを見るのは初めてだったね。


「これがテオドルフの能力か……!」

「はい。この力のおかげで僕はこの地を開拓できました」


 僕が新しく生み出したのは、円形の容器の中央に鉄の針が付けられた方位磁針コンパスだった。

 その容器は二重構造になっていて、針のあるスペースの下に物を収納できる場所があった。僕はそこを開けて、中に黄金竜の鱗を入れる。すると針がぴくぴくっと反応しある一点を指し示す。


「これは『魔法のコンパス』という魔道具です。中に物を入れると、それと同じ物を探してくれます。なのでこの針の指す先に黄金竜はいるはずです」

「いや、なんでそんな凄い魔道具を一瞬で作れるんだ? これだけでも売ったらかなりの価値がつくと思うぞ?」

「そんなあ大げさですよ。ねえレイラ」

「テオ様の作る物は全て素晴らしいので、売ってしまうなどありえません」


 僕のことを抱きかかえながら、レイラはズレた返事をする。

 ちなみになぜか僕は今レイラの膝の上に座らされている。急に揺れたら危ないから、らしいのだけど他の意思を感じて仕方がない。たまに頭の匂いかがれている気がするし。


「針の差している方向は……うん、進行方向とそれほどズレはないね。このまま進んで大丈夫そうだ」


 こうして僕たちを乗せたゴーレムは、黄金竜のもとにたどり着くのだった。

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