第12話 長い一日の終わり
「ふう、疲れた……」
夜遅くまで続いた宴を終え、僕は避難地の中に新しく作った家に入り、そこにあるベッドに腰をかける。
今日はこの避難地で夜を明かして、明日新しい領民の人たちと一緒に僕の家に向かう予定だ。あそこ周辺を最初の村として、北の大地を開拓していこうと思っている。
「領地の名前と……村の名前も考えなきゃね。いつまでも『北の大地』じゃ締まらないし」
この土地は長い間人が住んでいないので領地の名前はないのだ。1000年前、瘴気に侵される前だったら名前があったかもしれないけど、そんな昔の記録は残っていない。新しくつける必要があるだろう。
「お疲れ様でしたテオ様。ゆっくりお休みください」
そう僕をねぎらってくれたのは、メイドのレイラだ。
撤去した防護柵の素材を使って家はたくさん作ったのだけど、当然のごとき顔でレイラは僕と同じ家に入ってきた。
「
「おっと手が」
ベッドをもう一個作ると、レイラが超高速で剣を振るい一瞬でベッドをバラバラにしてしまう。見るも無惨な姿となったベッドを見て、僕は唖然とする。
「すみません。手がすべりました」
「いやこれすべったとかいう次元じゃないよね!?」
そう詰め寄るけど、レイラは明後日の方を見てそれをスルーする。普段はなんでも言うことを聞いてくれるけど、一度こうなったらなにをしても無視をする。
僕は「はあ」とため息をついて諦める。
「ところでレイラは今日どうだったの? 森を探索してたんでしょ?」
「はい。一日中森を探索しましたが、恥ずかしながら
このラルド大森林は非常に広い。なんの手がかりもなしにこの小さな避難地を見つけるのは難しいだろう。僕がここに来れたのもアイシャさんの案内があってのことだ。自力じゃとても見つからない。
「しかし代わりと言ってはなんですが、よい物を手に入れました」
「良い物?」
なんだろうと首を傾げると、レイラはテーブルの上にガラガラとなにか石のような物をたくさん袋から出して置く。
近づいてそれをよく見て、僕は驚く。
「これってもしかして魔石!?」
「はい。森で何回もモンスターと遭遇しまして。全てを斬り伏せていたらたくさん集まりました」
レイラが出した大小様々な魔石は全部で数十個以上あった。
さすがにゴブリンキングから取れた魔石と比べたら小ぶりだけど、十分な大きさだ。これさえあれば色々な物が作れるようになる。開拓するのももっと楽になるだろうね。
「ありがとうレイラ、助かるよ!」
そう言って彼女の手をぎゅっと握ると、レイラは「ひゃ、ひゃい」と顔を赤らめてそっぽを向く。あれ? なにか間違えたかな?
いつもスキンシップが激しいから喜ぶと思ったけど、アテが外れてしまった。
「さ、さあ。もう夜も遅いですし寝ましょう。どうぞこちらへ」
「あ。一緒には寝るんだ……」
レイラに抱きかかえられ、僕はベッドまで運ばれ横になる。
フェンリルのルーナさんとの出会い、ゴブリンとの戦いと今日は色んなことがあった。明日からは領民との暮らしも待っているし、やることは尽きない。
でもみんないい人だし、レイラもいる。なんとかなるだろう。
そう思いながら僕は眠りにつくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます