第三章 領地を広げよう!
第1話 家に帰ろう!
避難地でゴブリンを追い払った翌日。
僕はゴブリンキングから取れた大きな魔石を持って外に立っていた。
「
ゴブリンキングの魔石を核として、土と岩が形を成していく。
現れたのはゴームと同じくらいの大きさのゴーレム。ずんぐりむっくりなゴームとは違い、こっちは引き締まっている感じだ。ゴブリンキングの体格とかなり近い。
「……」
その大きなゴーレムは立ちながら僕のことをじっと見る。
圧迫感に緊張していると、そのゴーレムはゆっくりと膝をつき、僕に向かって
「おお……」
「凄い。言うことを聞くみたいだ」
「これは頼もしい……!」
一連の出来事を見ていた村の人たちが、感心したように話し始める。
ふう、緊張した。もしミスってしまったら呆れられていたかもしれない。領主としてしっかりしているところを見せないと。
「お見事ですテオ様。このゴーレムからは強い忠誠心を感じます。いい心がけです」
「ガウッ」
レイラの言葉にゴーレムは返事をする。
確かにこのゴーレムからは忠誠心を感じる。もしかしたら僕がゴブリンキングにトドメを差した時の記憶が残っていて、それで認めてくれているのかもしれない。
ちなみにゴームは忠誠心ていうより家族の絆って感じだ、このゴーレムから向けられる感情とは少し違う。
魔石が違うからゴーレムの特性も変わったのかな? 興味深いね。
「ガウ……」
新しいゴーレムはひざまずきながら、なにかを期待するような目を向けてくる。いったいどうしたんだろう?
首を傾げているとレイラが耳打ちしてくる。
「テオ様、おそらく彼は『名前』を欲しがっているのかと。テオ様はこのゴーレムの創造主、親も同じです。ぜひ名前を付けてあげてください」
「名前かあ。ゴームにも付けたし、確かにこの子にだけあげないのは可哀想だよね」
名前名前……なにがいいだろう。
元がゴブリンだからゴブ〇〇とかがいいかなかなと思ったけど、それだと安直すぎるかな? ゴームって名前を付けた僕が言えたことじゃないけど。
しばらく考えた僕は、一つの名前をひねり出す。
「そうだね……ゴブリンの時、大きな牙が立派だったから『ガルム』とかどう?」
「ガウッ!」
新しい仲間、ガルムは嬉しそうに声を上げる。
良かった、気に入ってくれたみたいだ。
「それじゃあ早速最初の仕事をお願いしていい? あ、あっちにいるゴーレムは君の仲間だから仲良くしてね」
「ガウッ!」
ガルムの頼もしい言葉に頷いた僕は、避難地にあった家を解体して得た木材を使い、ある物を作る。
「
無数の木材が組み合わさり、大きな馬車を一瞬にしてクラフトする。
その馬車の内装は物をたくさん入れるというよりも、人がたくさん乗れるようになっている。
「さ、乗ってください!」
外に集まってもらっていた人たちを、馬車の中に誘導する。
入るのは子どもに女性、年を召した人など長時間歩くことが苦手な人たちだ。
「テオドルフ様、よろしくお願いいたします」
「はい、任せてください」
最後に村長のガラドさんを乗せ、馬車の中はいっぱいになる。20人位は入れたかな? 村の人は全部で40人なので残りの半分くらいの人には歩いてもらうことになる。
「それじゃあゴーム、ガルム、よろしくね」
「ゴーッ!」
「ガウッ!」
二人のゴーレムは任せろとばかりに声を上げると、馬車を引き始める。
当然ながら
馬車ならぬゴーレム車だ。馬より疲れ知らずなのでゴーレムの数が増えたらこっちの方が流行るかもしれない。
いや、それより先に『自動車』を作れるか試すのも面白いかも。
「よし、それじゃあ僕たちの家に行こうか。レイラ、お願い」
「お任せください」
レイラはそう言うと剣の柄をつかみ、目にも留まらぬ速さで剣を振るう。
すると衝撃波が発生し、ズパッ! と目の前の木々を一直線に切り倒してしまう。今の一回で百本近くは斬れてそうだ。
「凄い! さすがだねレイラ!」
「お褒めに預かり光栄です」
レイラは澄ました顔をしながらも少しだけドヤ顔している。
普段はクールな彼女だけど、こういう可愛らしい一面もある。まあそんなこと口にして褒めた日にはどんな目に合わされるか分からないので口にはしないけど……。
「テオ様、お次はどうなさいますか?」
「あ、うん。まずは木を回収するね。
手を倒れている木に向けると、一瞬にして大量の木が
「よし、それで次は……
レイラが切り拓いたところに石が敷き詰められ、一瞬にして街道が出来上がる。
これなら森の中でも馬車が走れる。後はこれを繰り返していけば僕の家までそれほどかからず帰れるだろう。
「道ができた!?」
「おお……凄い」
「これも魔法なのか?」
「馬鹿、これは女神様のお力だよ」
「さすがテオ様だ!」
「ありがたやありがたや……」
村の人たちは口々に僕のことをそう讃えてくるので、なんだかむず痒い。
でも嫌われたり失望されるよりはいいか。こう思ってもらうのにも慣れないとね。
「それじゃあ出発します! みなさんついてきてください!」
こうして僕は避難地にいた人々を連れて、自宅に帰るのだった。
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