第2話 家を建てよう!
森の中を歩くこと約半日。
途中休憩を挟みながら歩き続けた僕たちは、目的地である僕の家がある場所へとたどり着いた。
「どうぞ、降りてください」
「は、はい」
「ここが私たちの新しい村……!」
村の人たちが馬車から降りて、辺りを見渡す。
結構長い間馬車に揺られていたけど、特に体長を悪くした人はいなさそうだ。
「それじゃあ早速みなさんの住居を作りますね」
森の中を進みながら木材を回収したので、
「
木材があっという間に組み立てられ、一軒家が出来上がる。
家同士に距離が空くようにもう一軒、更に一軒と家を建てていく。ちなみに以前から領民が増えたらどうするかレイラと相談していたので、どういう区画で建てるか考えてある。
それでもこうした方がよかったみたいなのは出てくるかもしれないけど、もし変更したくなったら簡単に作り直せるからひとまず仮でもいいのでどんどん建てていく。
家がないというのはつらいはずだ、みんなゴブリンとの戦いで疲れているはずだからまずはゆっくりしてもらわないと。
「おお……凄い!」
「こんないい家、村にいた頃でも住めなかったぞ!」
「家具もある!」
「ありがとうございますテオドルフ様!」
村の人たちはとっても喜んでくれた。
中には「うう、これで安心して暮らせる……」と泣き出す人までいる。それほど森での暮らしはつらく苦しいものだったんだろう。ここでの暮らしは幸せだと嬉しいんだけど。
「テオドルフ様……ありがとうございます。みな喜んでおります」
そう話しかけてきたのは村長のガラドさんだった。
「誰がどこに住むなどはこちらでやります。そしてみなの元気が戻り次第、この領地のために働かせていただきます」
「はい、よろしくお願いします」
ガラドさんには引き続き村の人たちのまとめ役をしてもらうことにした。ひとまずみんなにはここをちゃんとした村にしてもらって、その間に僕は更に領土を広めるという手はずだ。
人が増えたら村を街の規模にしたり、第二第三の村を作るのもいいね。
「畑仕事でしたら村の者たちも覚えがあります。見たところ立派な作物が取れるご様子。きっと力になれますでしょう。あとは家畜でもいればその世話もできるのですが……残念ながら家畜を連れてくることはできず、全部村で逃してしまいました」
ガラドさんは申し訳無さそうに目を伏せる。
でもそれは仕方ない判断だと思う。動物を連れてあの森を歩くのはとても大変だ。羊とか牛とかいれば色々便利だったけど、仕方ない。
「ひとまず今はそのようなところでしょうか。またなにかありましたらご連絡いたします。連絡役はアイシャに任せようと思っていますが、よろしいでしょうか」
「アイシャさん、ですか?」
「はい。彼女は若く利口な子です。頭の回転もわしなんかよりずっと速いし、村の者たちにも好かれています。他の者よりテオドルフ様との面識も深いですし適任でしょう」
確かにアイシャさんなら僕も緊張せずに話せるかもしれない。
僕は「分かりました」とそれを了承する。
「……実はアイシャは流行り病で家族を亡くし、孤独な身なのです。このようなことを領主である貴方にお願いするのは失礼と理解しておりますが……どうかよくしてやってください。よろしくお願いいたします」
ガラドさんはそう言って深く頭を下げる。
アイシャさんが一人なんて知らなかった。家族を失うつらさは僕もよく分かっているつもりだ。断る理由はどこにもない。
「はい。もちろんです」
僕は胸を張ってそう答えるのだった。
◇ ◇ ◇
「ふう……疲れたし少し休もうかな」
家を建てたし、後のことは村の人たちに任せて大丈夫だろう。
そう考えた僕は、自分の家に向かう。
実は結構疲れていてくたくただ。
ちなみに大きな物以外にも作りが細かい物も疲れる。大砲とかは剣より複雑なので疲れる。
「それにしてもレイラはどこにいったんだろう?」
家に着いてからレイラの姿が見えなかった。
いつもなら疲れてるのを察知してすぐ拉致……じゃなくて介抱してくれるんだけど。どこにも見当たらない。これはかなり珍しい。
「もしかしてレイラも疲れてダウンしちゃったのかな? あまり想像つかないけど」
レイラは道中の木をバッタバッタと斬り倒していたので疲れていてもおかしくない。
どんなにハードな仕事が続いても汗一つかかないレイラがダウンしているとこなんて想像つかないけど、彼女も人間なのでダウンしている可能性はある。
心配しながら家の扉を開けると……そこには僕が予想だにしていなかった人物が立っていた。
「お、おかえりなさいませっ! ご主人さまっ!」
「……アイシャさん?」
なんと僕を出迎えてくれたのはアイシャさんだった。
しかもなぜか彼女は
「ふむ、まだたどたどしいですが、愛情は感じられます。62点」
一連の様子を少し離れていたところで見ていたレイラが、アイシャさんを辛口に採点する。
いったいなにをしてるの……?
「レイラ。これはどういうこと?」
「実は彼女には目をつけていたのです、メイドの才能があるのではないかと。それで私の部下にならないかと打診したところ、こころよく引き受けてくださいました」
レイラはすました顔でそう説明する。
まさかそんなことをしてたなんて……。
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