第4話 準備をしよう!

 アイシャさんの村の人たちを助けに行くことを決めた僕は、アイシャさんを連れてまず家の隣にある倉庫に向かった。


 僕はお世辞にも強いとは言えない。身体能力は低いほうだし、魔法も使えない。

 たとえ相手がゴブリン一体でも勝てるかどうか分からないレベルだ。普通に加勢に行っても足を引っ張るだけだ。役に立つには『自動製作オートクラフト』の力を借りるしかない。


 その力を最大限に活用するために、倉庫に来たんだ。


「すごい……」


 倉庫の中を見たアイシャさんは驚いたように呟く。

 倉庫の中には大量の『資材』が保管されていた。岩や木材、鉄などのクラフト材料だ。家の側で取れた資材は全てこの倉庫に保管されている。

 他にもクラフトしておいたスコップやピッケル、剣も保管されている。


「こんなに色々あるなんて。テオくんって大工さんなの?」

「はは……似たようなものですかね」


 あながち否定できない。

 僕は苦笑しながら右手を前に出し、大量の資材に狙いを定める。


次元収納インベントリ


 そう呟いた瞬間、目の前にあった大量の資材が一瞬にして消え失せる・・・・・

 それを見たアイシャさんは「え!?」と驚く。


「き、消えちゃった! なにが起きたの?」

「えっと、これも魔法みたいなものです。アイテムを別次元に保管したんです」

「へええ……そんなことができちゃうんだ」


 もちろんこれも魔法じゃない。

 これは自動製作オートクラフトに付けられた力の一つで、僕は最近この能力の存在に気づいた。この力さえあれば、大量の資材やアイテムを持ったまま移動できる。

 まさに自動製作オートクラフトの為に作られた能力と言えるだろう。

 ゲームでもたくさんのアイテムを持ち運ぶことができるけど、まさかそれを再現してくれているとは思わなかった。


「では行きましょうか。道案内をお願いできますか?」

「あ、うん。お願いねテオくん」


 今は納得してくれているけど、アイシャさんは最初僕が森に行くのを止めてくれようとした。村の問題のせいで僕を危険な目にあうなんて許せなかったみたいだ。

なんとか説き伏せることができたのはゴームのおかげだ。ゴームの力を見たアイシャさんは、これなら僕が危険を冒さずゴブリンを退治できると納得してくれた。


「じゃあゴーム、お願い!」

「ゴーッ!」


 ゴームは頼もしくそう返事をすると、僕たちを両手で抱え南西めがけ駆け出す。


「きゃあ!?」


 かわいらしい叫び声をあげるアイシャさん。

 ゴームは見た目こそゴツくて鈍重そうだけど、意外と速い・・

 走る速度も僕よりずっと速いし機敏だ。体力も全然尽きないし、森の中でも問題なく走破できる足の強さを持っている。


 ものの数分で森にたどり着いたゴームは、アイシャさんの案内のもと森の中をぐんぐん奥に進んでいく。


「……レイラと会えればいいんだけど、それは難しそうだね」


 朝早く家を出たレイラも、南西の森に向かった。

 彼女もこの森にいると思うけど、出会うのは難しいだろう。


 この森『ラルド大森林』は、ヴィットア領と北の大地だけじゃなくて、他の領地にも広がっている大きな森だ。その上木が生い茂っていてかなり視界が悪い。

 これじゃ同じ森にいたとしても偶然会うのを期待できない。レイラの加勢をアテにしちゃ駄目だ。


「……ん?」


 森の中を駆けていると、近くの草むらがガサガサと動く。

 そして次の瞬間、灰色の毛をした狼が四匹、僕たちの進路を塞ぐように合わられる。


「ぐ、グレイウルフ……!」


 狼を見たアイシャさんが驚く。

 その名前は聞いたことがある。確か群れで行動する狼で、抜群のチームワークを駆使して獲物を狩る習性がある。

 確か人間を襲うこともあるはず、こんなとこで出会っちゃうなんて。


『ルル……』


 グレイウルフたちは低く唸りながらゆっくり距離を縮めてくる。

 どうしよう。ゴームは今両手が塞がってるから上手く戦うことは難しいのに。こうなったら無理やりゴームを走らせて突破するしかないか……と、思っていると突然グレイウルフの動きが変わる。


『ガ、ガウッ!?』


 なにかに驚いたような声を上げるグレイウルフ。

 そしてグレイウルフたちはなぜかペコペコと頭を下げて一目散に逃げ出してしまう。


「へ? どういうこと?」


 不思議そうな顔をするアイシャさん。僕もわけが分からず混乱する。

 グレイウルフの態度が変わった時、確かにグレイウルフは僕を見ていた。ということは僕の「なにか」に驚き態度を変えたということだ。


「……あ」


 その時、僕はあることを思い出した。

 僕はここに来る前、フェンリルのルーナさんから『フェンリルの加護』を貰った。フェンリルと言えば最強の『狼』だ。その加護を持っているからグレイウルフは逃げたんだ。


「そういえば鑑定で見れるかな?」


 試しに自分に鑑定をかけてみる。

 すると、


◯テオドルフ・フォルレアン

フォルニア王国第三王子。現在は王都を追放され北の大地の領主となっている。

転生者であり、その時女神よりギフトを授かっている。

ギフト:自動製作オートクラフト

万物を創造する神の力。使用者の想像力でその可能性は無限に広がる。

加護:女神の加護

女神が見守ってくれる。神性を獲得し、魔属性への耐性が大きく上がる。運が大きく上がる。運命改変能力の獲得。

神狼フェンリルの加護

あらゆる災厄を退ける力。恐怖に打ち勝つ精神力が身につく。狼系生物は無条件に降伏する。


 ……なんか知らない内に女神様の加護までついていた。

 神性とかいうヤバそうなものまで持ってるし、僕はこれからどうなっちゃうんだろう?

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