第18話 勝利の宴
「それではみんなで掴んだ勝利を祝って!」
「「「「かんぱーい!!」」」」
地竜と飛竜の襲来から村を防衛した日の夜。
僕たちは勝利を祝って宴を開いていた。
ちょうどローランさんがお酒を持ってきてくれていたので、大人たちはそれを浴びるように飲んでいる。お酒を飲むのは久しぶりみたいなのでみんな嬉しそうだ。
村ではぶどうも採れるし、今度それでお酒を作ってみるのも面白いかもしれないね。
「テオ様、少しよろしいでしょうか」
「ん? どうしたのレイラ」
「少し困ったことがございまして……知恵をお借りしたいのです」
村の人達が用意してくれたごちそうに手を付けていると、レイラに呼ばれる。
どうしたんだろうと後をついていくと、そこには大きな肉の塊が置いてあった。
「これって、竜の肉だよね」
「はい。そろそろお肉の準備をしようと思ったのですが、想像よりも『瘴気』の影響が強く、このままではお出しできないのです」
レイラの言う通り、肉には瘴気が残っていて黒いオーラがうっすら出ている。
うーん、困ったね。触るくらいなら平気そうだけど、体内に入れたらきっと悪影響が出てしまうだろう。みんなお肉を心待ちにしているだろうし、どうにかしてあげたい。
「瘴気をどうにかする方法かあ……あ」
考えた僕は、ある方法を思いつく。
上手くいくかは分からないけど、試して見る価値はある。
僕は
するとバシュ! という音とともに、肉の瘴気が消え失せる。
やった! 上手くいったみたいだ!
「テオ様、これは……!」
「土の瘴気が消せたからもしかしたらと思ったんだ」
僕が振るったそれは、
この鍬で耕した土地は、瘴気が消える。その効果は土だけじゃなくて他の物にも及ぶみたいだ。
「さすがですテオ様。このようなことを思いつくなど常人にはできません」
「ち、近い近い」
ぐいぐいと体を寄せてくるレイラを押し返す。
最近はなにかと理由をつけてはスキンシップをはかってくるので大変だ。いや前からそうではあったけど、最近は更に過激だ。
「でも瘴気を消せるなら、瘴気に侵されたモンスターを元に戻せたりもできたのかな……」
「それは難しいであろうな」
「え?」
声のした方向を向くと、そこにはフェンリルのルーナさんがいた。
宴を楽しんでいるみたいで、手にはお酒がなみなみと注がれた樽の盃を持っている。
「瘴気に侵され理性を失ったモンスターは、別の生き物になり果てる。瘴気に侵された初期であれば救うこともできるかもしれぬが、その地竜や飛竜はもう手遅れだっただろう。お主が気に病む必要はない。介錯するのが正解だ」
どうやら僕の考えは読まれてしまっていたようだ。
もし元に戻せるなら、その方がよかったのかもと心の底で罪悪感を覚えてしまっていた。
「そして命を奪ったのなら、食うてやるのが礼儀。どれどれ」
ルーナさんはスパッと鋭い手刀で肉をステーキサイズに切ると、大きく口を開いてぱくりと一口で食べてしまった。
生肉を食べて大丈夫なのかと心配したけど、よく考えたらルーナさんはフェンリル。生肉くらいでお腹を壊したりはしないか。
「うん、うまい! 瘴気はきちんと浄化されているぞ。これなら人の子が食べても大丈夫であろう」
「ありがとうございます。じゃあレイラ、これの調理をお願いしていい?」
「はい、もちろんです。腕によりをかけてお作りいたしますね」
竜の肉は市場にあまり出ない高級品。
食べるのが楽しみだ!
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