第19話 ドラゴンを食べよう!
「肉だ!」
「待ってました!」
「うわー! いい匂い!」
「まさかドラゴンの肉を食べられる時が来るなんて!」
メインディッシュの登場に、村人のみんなは沸く。
ドラゴンのステーキに、ドラゴンテールスープ。もも肉のローストに揚げ物、薄切りにしたものを野菜と一緒に挟んだものなどドラゴンのフルコースが運ばれてくる。
これらはレイラとアイシャ、そして新しくレイラに弟子入りした数人のメイド見習いが作ってくれた。レイラはゆくゆくはメイド隊を作ろうと考えているらしい。兵士より強そうな部隊ができそうで少しだけ怖い。
「テオ様にはこちらを。一番脂が乗っていて美味しいと思います」
「ありがとうレイラ。いただくね」
僕の前に置かれたのはシンプルなドラゴンステーキ。
肉厚なそのお肉は、脂でキラキラと輝いていた。暴力的なほど美味しそうな匂い鼻に入ってきて、お腹がぐうと鳴ってしまう。
「いただきます」
ナイフとスッとお肉に差し込み、切る。
中がほんのり赤い、絶妙な火加減だ。結構大きく切ってしまったそれを、僕はえいと一口で食べる。
「……っ!!」
食べた瞬間、口の中に肉汁の洪水が発生する。
強烈なお肉の旨みが口いっぱいに広がり自然と頬が緩んでしまう。それほどまでにドラゴンステーキは美味しかった。
「これすっごく美味しいよ!」
「それはなによりです」
レイラはくす、と笑みを浮かべる。
見れば他の人たちもドラゴンの肉を美味しそうに食べている。
「うめー!!」
「なんだこの肉!?」
「こんなの食べたことないよ!」
「生きててよかった……ぐすん」
「テオドルフ様ありがとうございます!」
「テオドルフ様バンザイ!」
気づけばテオドルフコールが始まっていた。
恥ずかしいけど、嬉しい気持ちもある。少しは僕も領主らしいことができているのかな。
「わんっ!」
と、そんなことを考えていると白いもふもふが足にまとわりついてくる。
フェンリルの子ども、シルクだ。どうやらお肉が食べたいみたいでキラキラと期待するような目でこちらを見ている。
「ごめんごめん、シルクも食べたいよね」
僕が食べているものとは別のステーキを一枚取り、シルクの前に出す。
するとシルクはそれを一口でぱくっと食べてしまう。
「どう? 美味しい?」
「わんっ!!」
元気よく吠えるシルク。
どうやら気に入ってくれたみたいだ。
見れば他のフェンリルたちもドラゴンの肉をガツガツと食べている。
だいぶ村の人達とも打ち解けているみたいで、フェンリルをなでている人もちょくちょくいる。もうフェンリルたちも村になくてはならない存在だ。
「みんな楽しそうだ。頑張ってよかったな……」
「なーにたそがれてんのよ」
一人呟いていると、隣にアリスが座ってくる。
彼女も楽しんでいるようで、右手には焼いた骨付き肉、左手にはお酒の入ったジョッキが握られている。
「あんたあんまり食べてないんじゃないの? 主役なんだからもっと食べなさいよ。ほら、私の分けてあげる」
「そのような食べかけ、テオ様にはふさわしくありません。下げてください」
アリスの言葉に割り込むように、レイラが口を挟んでくる。
レイラはアリスとは逆隣りに座る、つまり僕は二人に挟まれる形になっている。逃げ場はない。
「テオ様、ドラゴンのシチューができましたのでぜひご賞味ください。温かくなるようスパイスを効かせました、美味しいですよ」
「ちょっとレイラ! 今私が話してるんだから邪魔しないでよ!」
「アリス様はもう寝たほうがよろしいのでは? 大きくなれませんよ?」
「子ども扱いするんじゃないわよ!」
二人は僕を挟んで口喧嘩を始めてしまう。
仲良くしてほしいんだけど、二人は顔を合わせる度こうなってしまう。うーん、なんとか仲直りできないかな。
「第一あんた、メイドなのにでしゃばりすぎなのよ。後ろで大人しく控えていなさい」
「……残念ながらそうはいかないのですよ。私とテオ様の
レイラはどや顔でそう言い放つ。こんな顔をする彼女は珍しい。
いや、それ以前になにを言ってるの? こんなこと言ったら火に油を注ぐようなものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます