第7話 エルフと仲良くなろう!
エルフの里にやって来てから、二日の時が経った。
普段は人と関わらない彼らと仲良くなれるかは不安だった。
もしかしたら溝を深めることになってしまうかもしれないと思っていたけど、
「おやテオドルフ。今日はどこ行くんだ?」
「人間の兄ちゃん! 今日は遊べるの?」
「テオくん、今日は若い女エルフたちで集まりがあるんだけど一緒にどう?」
「おい、今日はコメの作り方を教えてもらうんだ! 俺が先だぞ!」
なんかめっちゃ仲良くなることができた。
みんなに腕を引っ張られながら、この二日間のことを思い返す。
僕は彼らと仲良くなるため、話しかけ続けた。
困ってることがないか聞いて、僕に解決できることがあれば率先して力を貸した。
シルクがいてくれたおかげで、エルフの子どもたちと話す機会を作ることもできた。人見知りなシルクだけど、僕のためと子どもと友好的に接してくれた。
後は持ってきたお米でおにぎりを振舞ったり、瘴気に侵された畑を神の鍬で浄化してたりしたら……最初は壁を感じた彼らだけど、みんな根が優しいからすぐに心を開いてくれた。
「ははっ、すっかり人気者じゃなテオドルフ」
そう言いながら近づいてきたのはルーナさんだった。
僕はなんとかエルフの人たちの輪から抜け出して、彼女のもとに行く。
「僕はなにもしてないですよ。みなさんがいい人だっただけです」
「謙遜せんでもよい。お主が頑張っておったのは見ておった。だが……」
ルーナさんは視線を遠くに移す。
そこにいたのはエレオノーラさんだった。彼女は険しい表情で僕を見ていた。
僕と視線が合った彼女は「ふんっ」とそっぽを向いてどこかに行ってしまう。
「あの堅物は苦労しそうだな」
「はい……嫌われてしまっているみたいで」
「奴は小さい頃から姉のアンナを敬愛しておった。そんな奴を害そうとした人間を簡単には許せぬのであろう。なに、心配せずともいつかはあの強がりも根負けするであろう。お主は底なしのお人好しだからのう」
ルーナさんはそう言ってくれるけど、僕は不安だった。
エレオノーラさんはこのエルフの里の『戦士長』を務めていて、里のNo.2的ポジションらしい。彼女と仲良くなれなかったら、エルフの人たちと友好関係を結ぶのは不可能だ。
なんとかきっかけがつかめたらいいけど。
そう考えていると、少し離れたところを顔色の悪いエルフの人が歩いているのが目に入る。
「……そういえば結構咳をしている人が多いですね。なにか病気でも流行っているんでしょうか?」
「その質問には、私がお答えしましょう」
「へ?」
唐突に話しかけられ振り返ると、そこには木でできた杖をつきながらこちらに歩いてくる女性がいた。
エルフの里の長、アンナローゼさんだ。
彼女は去っていくエレオノーラさんをちらと見ると、申し訳なさそうに口を開く。
「申し訳ありませんお二方、私の妹が……」
「あ、いえ、大丈夫ですよ。僕は気にしてませんから」
そう取り繕うけど、あそこまで拒絶されると正直ショックだ。
仲良くなりたいけど、エレオノーラさんは人間そのものに強い嫌悪感を持っている。それは大切なお姉さんが人間に襲われたところから来ている、そう簡単に消せなくて当然だ。
「ところでエレオノーラさんはどちらに行ったのでしょうか? あっちに家や畑はないと思うのですが」
「妹は『世界樹』に向かったのだと思います。鍛錬と狩りの時間以外は、そちらに行くことが多いですので」
「なるほど、どうりで里であまり見かけないんですね」
村の近くには巨大な木『世界樹』が生えている。
詳しいことは知らないけど、エルフの人たちにとってこの木はとても大事なものみたいだ。確かに立派だし、なんか神聖なものを感じる。
エルフの人たちはよく世界樹の前に行っては、お供物をしたりお祈りをしていると聞いた。エレオノーラさんもそうしているのかな?
「世界樹は神力の宿っている、神聖な木です。世界樹には瘴気を退ける力があり、1000年もの間私たちを守ってくださってくれてました。しかしこの前の話にも出た通り、世界樹はその力が弱まりつつあります」
アンナローゼさんは目を伏せながら言う。
世界樹の力が弱まったからこそ、彼らは以前里を出ていく決断をしたんだ。だけどその時に人間の裏切りにあい、この里に彼らは戻ってきた。
「世界樹のどこかが瘴気に侵されている可能性が高い。里の
「なるほど……」
もし世界樹が完全にその力を失ってしまったら、この森は瘴気に対抗することができなくなってしまう。そうなったらエルフの人たちはどうなってしまうんだろう、考えるだけで怖い。
できるなら力になりたい。
もしどうにかできたらエレオノーラさんにも見直してもらえるかもしれないしね。
「世界樹には僕も近づいて大丈夫ですか?」
「はい、それは構いませんが……」
「ありがとうございます! じゃあ僕も少し調べてきますね!」
そう言って僕は、世界樹に向かって走り出すのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます