第8話 世界樹を調べよう!
「うわあ……凄いですね。大きいのはもちろん、不思議な力を感じます」
里長のアンナローゼさんと別れた僕は、ルーナさんとともに世界樹の近くに行った。
世界樹の周りには神聖な雰囲気が漂っている。これも世界樹が『神力』を宿しているからなのかな? 女神様からスキルを貰った僕だけど、神力のことはよく分からない。僕の体にも宿っているのかな。
「やはりだいぶ弱っておるな。以前であればもっと強い神力を感じられたのだが」
残念そうにルーナさんは呟く。
世界樹の根や幹はところどころ黒ずんでいる。あれが瘴気に侵されている部分なんだろうね。村の土地を浄化する前に感じた嫌な雰囲気をあそこからも感じる。
世界樹を治すことができれば、エレオノーラさんもきっと見直してくれるはず。僕は更に世界樹に近づいて瘴気に侵されている場所へ行く。
その途中、世界樹に向かって祈っているエルフの人たちを見かけた。
世界樹の前には小さな広場があって、そこが彼らが祈る場所になっているみたいだ。
膝を地面につけて手を組み、祈るエルフの人たち。
瘴気がなくなるよう祈っている人も多いと思う。彼らのためにもなんとかしてあげたい。
「よし、それじゃあやってみようかな」
僕は
神の鍬には瘴気を無効化する力がある。鍬だから地面に高い効果を発揮するみたいだけど、他のものでも効果があることは竜の肉で証明済みだ。
普段はゴームに渡して土地を浄化して貰っているけど、今回は一応持ってきておいて良かったね。
「よい……しょ!」
神の鍬を振りかぶり、瘴気に侵された場所へ振り下ろす。
すると鍬の刃が当たった瞬間、バシュ! と音がして黒い瘴気が霧散する。やった、これで少しは元気に……
「なってなさそう、だね……」
そこそこ大きめの瘴気を消したはずだけど、世界樹はまだ元気になった感じはない。
その後も何個か瘴気を消してはみたけど、それでも駄目だった。いったいなにがいけないんだろう?
「そのようなことをやっても無駄だ。意味はない」
「へ?」
突然話しかけられそちらを向くと、そこにはエレオノーラさんがいた。
僕たちのことを遠目に観察していたみたいだ。
「意味がないってどういうことですか?」
「言葉の通りだ。私たちも瘴気がついた箇所を切除するなどの方法は試した。だが……無意味だった。
エレオノーラさんは悔しげに言う。
彼女たちも色んな方法を試したんだろう。そして……無理だった。
「世界樹を治そうとしてくれたことには礼を言う。だが我々でも無理だったことを人間ができるはずがない。諦めて帰ってくれ」
「……分かりました」
「そうか。分かって……」
「その瘴気の源を探してみます! 教えてくださりありがとうございます!」
「え? おい、ちょっと待て!」
まずは情報が必要だ。他のエルフにも話を聞いてみよう。
僕はそう決めて行動を開始するのだった。
◇ ◇ ◇
「おい人の話を……って、もう行ってしまったか……」
エレオノーラの手がむなしく空を切る。
少年はもうかなり遠くに行ってしまった。エレオノーラは止めるのを諦めため息をつく。
「くく、面白い奴だろう」
そう笑うのはフェンリルのルーナ。
彼女はテオドルフが消えた方を見ながら言葉を続ける。
「危なっかしいところもあるが、そこがよい。あやつならなにかを変えてくれる、我はそう思うのだ」
「……買い被り過ぎですよルーナ様。もう1000年間、状況は変わっていないのですから」
「ではもしあやつが世界樹をどうにかできたらどうする?」
「もしそのようなことがあれば、私も認識を改めますよ。あの少年の言うことをなんでも聞きましょう」
それを聞いたルーナは、にぃと嬉しそうに笑みを見せる。
「その言葉、忘れるでないぞ。言質は取ったからな」
そう言った彼女は、楽しげにテオドルフの後を追うのだった。
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