第30話 報告
フォルニア王国、王都フォーレイス。
そこにそびえる立派な王城の一室に、その男はいた。
「くく、今頃奴は絶望に打ちひしがれているだろうな。いい気味だ」
窓の下に広がる夜の王都を見ながら、赤い
「あいつも馬鹿なやつだ。大人しくあのボロ小屋で過ごしていればいいものを」
くく、と
テオドルフを死の大地へと送った彼は、それで満足しなかった。
少ししてから密偵を雇い、テオドルフの動向を探っていたのだ。そしてどんなに苦しんでいるかを詳細に報告しろと命じいていた。
しかしその報告は彼の想像していたものとは
テオドルフの村が発展していると聞いた時、ニルスはおおいにたまげた。驚きすぎて椅子から転げ落ちたほどだ。
「
テオドルフが村を発展させていると知ったニルスは激怒し、それを破壊する計画を建てた。
彼が選んだ方法はモンスターによる破壊。高価な精神操作系の魔道具を持っていた彼は、それを使いモンスターを操ることにした。
選ばれたのは北の大地に生息していたアダマンタートル。強いモンスターな上に精神操作系への耐性が低いことから今回の作戦にはうってつけであった。
ニルスは高い金で工作員を雇い、アダマンタートルを操作することに成功した。
魔道具は使い切りなのでなくなってしまったが、村を破壊できればよいとニルスは考えていた。
「しかしあいつ、どうやってあの状態から村を興したんだ? 気持ちの悪い奴だ」
密偵はさすがに村に近づくことはできなかった。
もしもう少しでも近づいていればフェンリルに補足され捕まっていただろう。
「……まあいい。これであいつの心も折れただろう。もしまだ悪あがきをしようものなら……今度こそ殺してしまっても構わないな」
勝利の美酒に酔うニルス。
すると扉が四回ノックされる。これはニルスが個人的に雇っている者の秘密の合図だ。
「いいぞ、入れ」
入ってきたのは普通の使用人に見える男だった。
しかしその者はニルスの私兵であり、汚れ仕事の窓口になっている男であった。
「ニルス様、報告が……」
「ああ、早く聞かせろ。テオドルフはどうだった? 村はどのように壊滅した?」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら尋ねるニルス。
一方男は「いや、その……」と言いよどむ。しびれを切らしたニルスが「早く言え」と急かすと、男は意を決して口を開く。
「アダマンタートルは……倒されました!」
「はあっ!?」
ニルスは再び椅子からひっくり返り、頭を床に強打する。
いだっ! と叫んだニルスはしばらく悶絶した後、立ち上がり男に詰め寄る。
「アダマンタートルが倒されただと!? ふざけるな、なぜそうなる! あれを動かすのにどれだけつぎ込んだと思ってる!」
「す、すみません! 私もなにがなんだか……」
男はひとまず密偵から聞いた情報を話す。
一瞬にして城壁ができただの、見たこともない大砲があっただの、巨大なゴーレムや狼が味方をしてただの、信じられない情報がいくつも飛び出てくる。
全てを聞いたニルスはわなわな震えながら叫ぶ。
「ふ、ふざけるな! デタラメばかり言いやがって! あいつがそんなことできるわけないだろ!」
「ひいっ!」
その鬼気迫る様子に男は怯える。
ニルスはヒートアップしながら詰め寄り続ける。
「いいか? あいつは落ちこぼれなんだよ! 女神に見捨てられた無能なんだ!」
「ご、ごめんなさいぃっ! ですがあの村が無事なのは確かな情報なのです! 信じてくださいぃ!」
泣きながら頭を下げる男。
ニルスは湧き上がる怒りを「チッ!」と椅子を蹴り飛ばすことで発散する。しかしそれだけでは到底長きに渡り蓄積されてきた
「……そうか、分かったぞ。あいつレイラに頼んでなんとかしてもらったな? クソが、自分はなにもせず、人の力だけでなんとかしたんだ。汚ねえ無能のヤリそうなことだ……!」
自分は手は汚さず手下に汚いことをやらせているのを棚にあげ、ニルスはテオドルフを批判する。
「これで済むと思うなよテオドルフ。必ず地獄に叩き落としてやるからな……」
瞳にどす黒い感情を滲ませながら、ニルスはそう呟くのだった。
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《あとがき》
これにて第一部完になります! ここまで読んでいただきありがとうございます!
書籍版1巻はここまで+加筆分になる予定です! ウェブでは書けなかったえっちな展開が追加される……かもしれません!
二部からは更に仲間が増え、賑やかになる予定ですので楽しみにお待ち下さい!
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