第3話 謎の人を助けよう!
「いやー助かった助かった! あんたらが通らなかったらワシは今頃野垂れ死んでおっただろう! しかもこんなに美味い飯をごちそうしてくれるとは! この恩は死んでも忘れんぞ!」
僕たちが山脈の側で出会った謎のおじさんは、出した料理を全て平らげるとそう上機嫌に話す。
結構な量を出したんだけど、一瞬で無くなっちゃった。おじさんの背は僕よりも低いのにいったいどこにそんな量が入るんだろう。謎だ。
「おっと、礼をしないといけないな。ちょい待っ……いつつ」
「あ、まだ動いちゃダメですよ! まだ傷が残っているんですから。えっと、はいこれを」
「ん? なんだこれは? 魔法薬か?」
するとその人は急に鋭い目つきになって
魔法薬は特殊な効果を持った薬のことで、
「はい、傷を直し体力を回復させる
「あまりこういった
おじさんは少しためらいながらも、腰に手を当ててぐいっと
するとみるみる間に体のすり傷や
「こりゃあ凄い。魔法薬の中には粗悪品も多いが、これは一級品だな。こんな物を通りすがりのワシにくれるなんて……あんたはなんていい人なんだ、ワシは感動したッ!」
そう言っておじさんはおんおんと男泣きする。
かなり情緒が豊かな人だ。この反応を見るに、この人も悪い人じゃなさそうだ。
「この礼ははずまんといけんな! まずは王にお伝えしてそれから……」
「えーと……その、その前にあなたのことをお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「おお! そういえば自己紹介がまだだったな、これはすまん。ワシの名前はガボ・レルド。見ての通りしがない
「ドワーフ……やっぱり……!」
ドワーフは低い背と立派なヒゲが特徴的な種族だ。
高い鍛冶技術を持っていて、他にも良質な鉱石を見極める目も持ち合わせていると本で見たことがある。
低い背はどんな穴にも入ることができて、筋肉質な肉体はどんな鉱石も掘り出すことができる。炭鉱夫としても高い適性を持つドワーフだけど、人間と一緒に暮らすことは少なくて王都でも見たことはない。
当然僕もドワーフに会うのは初めてだ。本でしか見たことがないから緊張するね。
「ところでそなたらはなぜここに? 近くに人間の集落はないと記憶しているが」
「あー……えっと、僕たちは最近近くに引っ越してきたんです。それで鉱石が必要になってここに」
「なるほど、そういうことだったか。それにしても……ふむ、死の大地に越してくるとは訳アリのようだな」
ドワーフのガボさんは鋭い目を僕たちに向けてくる。
どうしよう、僕たちのことを言ったほうがいいのかな? 悪い人じゃなさそうだし、身分を明かしても問題はなさそうだけど……。
「えっと……」
「ああ、言わんでもよい。込み入った事情であることはお主たちを見れば分かる。恩人を探るような真似はせぬよ」
「ガボさん……ありがとうございます」
「よいよい。これしきのこと、命を救ってもらったことに比べれば些末なこと。それよりもお主たち、鉱石を探しておると言ったな」
「はい。ちょっと入り用でして」
「それならば……うむ、ワシがどうにかしてみせよう」
ガボさんは胸を張り言い放つ。
鉱石のスペシャリストのドワーフが力になってくれるのはとても心強い。
「ありがとうございます! えっと、鉱石がある場所に案内してくれるんですか?」
「ふふ、それよりもっと
「ドワーフの……王国?」
この近くにドワーフの国があるなんて聞いたことがない。
ここは王都も近いし、国なんてあったら見つかってしまうと思うんだけど……。
僕よりも色々知ってそうなガーランに、なにか知ってないかなと視線を送ってみるけど、
「……私も存じ上げませんな。にわかには信じられぬ話です」
ガーランも僕と同じく知らなかった。
いったいどういうことなんだろう? まさか騙されているとか?
「はっはっは! 知らぬのも無理はない! なぜなら我らの国は人の目の届かぬところにあるのだからな!」
「目につかないところ?」
「ああ、我らの国はこの山脈にあるのだ」
「山脈って……見える範囲にはなにもないですけど」
山脈にはゴツゴツとした岩肌が広がっているだけで、建物のようなものは見えない。
山頂付近とかに隠れて住んでいるのかな? 上は寒そうで住むのには適してなさそうだけど。
「はっは! 違う違う! ワシらの国は
「ええ!? 山の中に国が!?」
僕だけじゃなくガーランもアリスも驚く。
その反応に満足したのかガボさんは得意げな顔をする。
「はっは! いい反応だ。それじゃあ招待するとしよう、ついてきてくれ」
すっかり元気になったガボさんは、立ち上がると山脈の方に歩き出す。
ドワーフの王国……いったいどんなところなんだろう。僕たちは期待に胸を膨らませながら彼の後をついていくのだった。
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