第4話 神金属《ゴッドメタル》

「いただきます」


 ベッドから起きた僕は、リビングにあるテーブルで朝食を食べ始める。

 具だくさんのスープに、パンにサラダ。どれもレイラが作ってくれたものでとても美味しい。


「すみません、お城での食事に比べたら質素ですよね……」

「そんなことないよ! こんな設備のないところでこんなに美味しいご飯を作れるのはレイラくらいだよ!」


 僕の作った家にまだキッチンはない。なのでレイラは外に石で焚き火台を作ってそこで料理してくれていた。食材もお城から持ってきたものをやりくりしてくれている。

 文句なんか言えるはずもない。


「でも食糧問題はまず解決しないと、だよね。ここらへんじゃ果物も取れないだろうし」


 僕たちがいる場所は北の大地の南端部分。

 一番荒れてる中央部とは違い、ここはまだ木が少し生えている。だけどどれもやせ細っていて果実はついていない。このままじゃすぐににしてしまうだろう。


「となるとやはりまずは『畑』でしょうか」

「そうだね。食料が安定したら、領民を増やすこともできるしね」


 家と食料さえあれば、しばらくは困らないはずだ。

 まずはそれを解決するため、畑から頑張るとしよう。


◇ ◇ ◇


 食事を終えた僕らは、家の裏手に行った。

 もちろん畑を作るためだ。そのための土地ならいくらでもある……だけど、


「とても畑に適しているとは思えませんね……」


 レイラは土を手に取り、サラサラと下に落とす。

 この土地の土は、土というより『砂』だった。栄養があるようには見えない。これじゃあ野菜は作れないだろうね。


 でもひとまずできることをやってみよう。


自動製作オートクラフトくわ!」


 近くにあった棒と石を使って、畑を耕す『くわ』を作成する。

 それを振りかぶり、土を掘り起こす。慣れない作業で手が痛むけど、何度かそれを繰り返す。だけど、


「はあ、はあ、なにも変わらない……」


 土は相変わらずサラサラとしたままだった。

 地面の中まで栄養がないみたいだ。これじゃ鍬でいくら耕しても意味がない。


「この『北の大地』はかつて起こった戦争により、土壌が瘴気で汚染されているといいます。何度か開拓しようと試みたようですが、どれも上手くいかなったといいます」


 『瘴気』は生き物の体を蝕む負のエネルギー……と、聞いたことがある。

 それがこの土に染み込んでしまっているんだ。このまま耕して種を植えたところで、芽が出ることはないだろう。


「うーん。どうしようか……」


 土を手に取り、悩む。

 すると突然土の上にポン! と画面のようなものが浮き上がる。


・土(瘴気汚染) 品質:最低

瘴気で汚染された土。

神の祝福でのみ汚染を除去できる。


「え? なにこれ?」


 思わずそう声が出る。

 空中に浮いているそれは、まるで投影映像ホログラムみたいだ。手を伸ばしてみたけど触れることはできなかった。


「どうされましたか?」


 レイラはそう言って首を傾げる。

 反応から察するに彼女には画面これが見えていなかった。


「僕だけに見える画面か……もしかして」


 女神様と会った時、女神様は最後に特殊な力……『神の祝福』をくれたと言っていた。

 多分これがそれなんだろう。物の情報を知ることができる力、名付けるなら『鑑定』かな?


「これは凄い力だ! 女神様には感謝しないと」


 情報がなによりの力になることを、僕はよく知っている。

 ゲームでもなにも知らないでやるのと、wikiを見ながらやるのでは進むスピードが段違いだ。僕は実質異世界wikiを手に入れたようなものだ。

 ありがとう女神様。


「えーと、浄化するには神の祝福が必要、かあ。女神様が力を貸してくれればいいけど……あ」


 あることを思い出し、ポケットから光り輝く石を取り出す。

 そしてそれをじっと見つめると、それの情報が表示される。


神金属ゴッドメタル ランク:EX 品質:神

神が作り出した特別な金属。

この金属を用いて作られた武具には、神の祝福が宿る。


「こ、これだ!」


 予想した通り、神金属ゴッドメタルには神の祝福を宿す効果があった。

 これを使えば瘴気の大地も浄化できるはず。きっと女神様はこれを見越して神金属ゴッドメタルをくれたんだね。

こんな貴重な物を農具にしてしまうことには抵抗があるけど、今は武器よりも食料だ。

 僕は神金属ゴッドメタルと棒を使ってクラフトをする。


自動製作オートクラフト!」


 神金属ゴッドメタルと棒が合体し、物凄い光が放たれる。

 その光が止むと、そこには白く輝く刃のくわがあった。


 なんだろう、凄い神聖な雰囲気を出している。とてもこれが農具には見えない。

 大きな教会に飾られていても全然違和感がなさそうだ。


「テオ様、それは……?」

「まあ見ててよ」


 不思議そうにしているレイラにそう言って、再び僕は鍬を振る。

 すると鍬は瘴気が溜め込まれた大地に突き刺さり……パッと白い光を放つ。


「うわ!?」


 光はすぐに収まり、そこにはなにも変わっていない地面が残っている。

 あれ? 上手くいかなかった?

 心配になりながら鍬を下ろした所の土をつかんで鑑定する。


・土 品質:神

神の祝福が宿った土。

この上に住む者は女神の加護を受け、育てられる作物は至上のものとなる。


「やった! うまくいった!」

「テオ様!? 急に抱きついたら危なあばばば」


 思わずレイラに抱きつくと、なぜか彼女は鼻血を出して倒れてしまう。

 無理がたたったのかな? レイラは頑張りすぎるところがあるからちゃんと休ませないと駄目だね。


 でもこれで畑を作る目処が立った。

 この調子でどんどん土地を耕して、北の大地を開拓するぞ!

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