第11話 集結する仲間
「ふうん……なるほどね。私がいない間にそんなことがあったのね」
テオドルフの話を聞き終えたアリスは、そう呟く。
レイラという女性のこと、護衛してもらったこと、そして今彼女は何者かの手によって操られている可能性が高いということ。テオドルフは知っている事を全てアリスに話した。
「確かに状況は良くなさそうね。でも安心しなさい、あんたにはこの超強い私がついているんだから。ふふ、修行の成果を見せるまたとないチャンスね」
「アリス……ありがとう。とっても頼もしいよ」
アリスが味方に加わったことにより、できることは飛躍的に多くなった。これならなんとかなるかもしれない、テオドルフの目に光が灯る。
「でもこれだけ人がいるとなると、こっそり戦うのも大変ね。どこかにおびき寄せる必要があるし、せめてあと一人くらい仲間に欲しいところね」
「他に仲間になってくれる人か……誰かいるかな」
自慢ではないが、テオドルフに知人は少ない。力を貸してくれて、なおかつ秘密を守ってくれる人となれば尚更だ。
悩んでいるとアリスが「あ」となにかを思いつき声を出す。
「そうだ。あいつがいるじゃない。きっと力を貸してくれるわ!」
「あいつ? 誰のこと?」
「決まってるじゃない。ガーランよ」
アリスが口にしたのは王国騎士のガーランであった。
確かに彼であれば戦力として申し分ないし、テオドルフとの仲も深い。
しかしテオドルフが彼の名前を出さなかったことには理由がある。
「レイラさんは母上のことを狙ってるかもしれない。それなのに彼女を助ける為に力を貸してくれるかな……?」
王妃イザベラの命を守ることをなにより優先するならば、テオドルフに力を貸すよりもイザベラの側から離れないほうがいい。
なによりまだ未熟である自分の策に乗ってくれるのだろうか。とテオドルフは悩んでいた。
しかしアリスはそんな彼の悩みを笑い飛ばす。
「なに言ってんのよ、そんな心配しなくて大丈夫。あいつも『馬鹿』だから乗ってくれるわよ」
「それはひどくない? 確かにガーランは抜けているところもあるけど……」
「違う違う。そういう意味じゃないわ。心配しなくても大丈夫だから行きましょ」
そう言うやアリスはガーランを探しに歩き出す。
テオドルフは不安を感じながらもその後ろを追いかけるのだった。
◇ ◇ ◇
ガーランを探すこと数分。
二人は運良く休憩に入ろうとしていたガーランと出会うことに成功した。
「なんと、まさかそのようなことになっていたとは……」
ガーランは深刻そうな表情で考え込む。
それを見たテオドルフは、やはりこのことを言うべきではなかったのではないかと思ってしまう。もしガーランがこのことを父や母に伝えてしまったら、レイラは助からないであろう。
テオドルフが悩む中、ガーランはゆっくりと口を開く。
「なるほど……ではすぐに動かなければなりませんね。殿下、なにか策はございますか?」
「……へ? て、手伝ってくれるの?」
「なにをおっしゃいますか! 当然でありましょう。我々の力で全員まるっと救ってみせましょうぞ!」
そう言って豪快に笑い飛ばすガーランを見て、目頭が熱くなる。
そしてその様子を見ていたアリスは、彼の背中を優しくぽんと叩く。
「言ったでしょ? 心配しなくて大丈夫だって。こいつも私と同じであんたを信用している『馬鹿』なんだから」
「ははは! その『馬鹿』ならいくら言われても悔しくないですな!」
まさかここまで自分のことを信用してくれているとは思っていなかったテオドルフは、涙が出そうになるほど感動する。
しかし今は泣いている暇はない。こみ上げる気持ちをぐっと抑え、テオドルフは言う。
「ありがとう二人とも。母上を……そしてレイラさんを助けるために力を貸してほしい」
その言葉に力強く頷く、アリスとガーラン。
そんな二人に、テオドルフはずっと考えていた『作戦』を話し始めるのだった
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